★★☆☆☆
あらすじ
地球の所有権をめぐる宇宙人兄弟の争いに巻き込まれてしまった女性・ジュピター。
感想
序盤は移民の清掃婦としてしがない生活を送る主人公が、宇宙人たちのSF的世界とどうつながっていくのかがよく分からないまま、物語は展開する。なので、観客も主人公と同じように、何が何だか状況が良く分からないまま、彼らの争いに巻き込まれていく気分を味わうことになる。ただ少しずつ状況は明らかになっていくので、全然見ていられる。情報を小出しにして、観客の興味を惹きつけていく手法は上手い。
前半の一時間ほどは、そうやって新たな情報を求めて食い入るように見ていられたのだが、段々とこれは全てがクリアになるのではなく、一定以上は明らかにならないようだということに気づいてくる。登場人物が多くて関係性を把握しづらいし、説明は不十分で分かりづらいしで、結局これは何をやっているのだ?とよく分からなくなってくる。
序盤は物語の分からない事リストから項目が少しずつ減っていっていたのに、ある時から逆に項目が増えていってしまうような感じだ。まるですりガラス越しのように、ぼんやりとした輪郭の物語を見せられても、モヤモヤしてイライラがたまるだけだ。
それでもこれは、要は三人の兄弟が争いをしているのだなということは分かる。だとすると別に兄弟喧嘩がどうなろうとどうでもいいかな、という気分にならなくもない。兄弟喧嘩でもいいが、せめて彼らに大きなものを背負わせて壮大な物語にして欲しかった。
それに主人公も突然わけの分からない状況に巻き込まれたのに、あっさりと自分の運命を受け入れすぎだ。チャニング・テイタム演じる男がなぜ主人公に肩入れするのかもよく分からないしで、終盤は物語の行く末に対する関心はかなり薄れてしまった。結局、兄弟喧嘩から恋愛ものへという流れの物語か。
こうなってくると、見ごたえのある壮大な宇宙の映像や迫力満点の戦いの様子も、単なる空回りにしか見えなくなってくる。それと、これだけの近未来的なSF映像の中で、チャニング・テイタム演じる男が、空を飛べるブーツ一辺倒で戦っているのはなんだか面白かった。そればっかりだとだんだん飽きてくるので、新たな武器をくり出せばいいのにと思ってしまうが、同じ武器を使い続けたほうがリアリティがあると言えばある。でもそこだけリアルを追求しなくてもいいのにとも思った。スターウォーズにおけるライトセーバー的な存在を狙ったのかもしれないが。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ラナ・ウォシャウスキー/アンディ・ウォシャウスキー
出演 チャニング・テイタム/ミラ・クニス/ショーン・ビーン/エディ・レッドメイン/ダグラス・ブース/タペンス・ミドルトン/テリー・ギリアム
音楽 マイケル・ジアッキーノ