★★★☆☆
あらすじ
病院の院長の男と、彼に関わる女たち。
感想
女たちに翻弄される病院経営者の主人公の姿が描かれるのだが、事の発端は主人公が愛人に毒入りの薬を渡してその夫に飲ませていた事。だが、これをさせていた理由が良く分からなかった。殺して何がしたかったのだろうか。女から金を引っ張りたかったという事なのかもしれないが、女がおかしくなってしまうとあっさりと手を引いてしまった。
そもそもの始まりがそれで、それに主人公は2代目のボンボンで悠々自適の暮らしをしているし、女の尻を追っかけてばかりだし、そして実際にモテているしで、どんなに女たちに翻弄されたとしても、正直あまり彼に同情は出来なかった。かれも「わるいやつら」のひとりと言ってもいいだろう。
女たちも、金や権力を求めて彼に近づいているわけではなく、単なる恋愛感情が元となっているので、何をしたところで痴情のもつれでしかなく、そんなに「わるいやつら」には見えなかった。愛情から始まったが途中で大金に釣られてしまったり、恨みに変わったりするというのは、よくある人間味あふれるドラマでしかない。
どうせなら最初から野心を抱いて彼に近づき、権謀術数を張り巡らして彼を破滅に追いやって欲しかった。そういう意味では松阪慶子演じるデザイナーが一番それに近かったかもしれない。結局、彼女と主人公だけが「わるいやつら」だったような気がする。
主人公も含めてほとんどの人たちが、状況に流されて右往左往する物語といった感じだった。ただ、最後のどんよりするようなエンディングは嫌いじゃない。
それから本筋とは関係ないが、主人公が玄関で靴を脱ぐときに、立ったまま交互に足を上げて靴のかかとを手でずらし、脱ぎやすくする動作をしていたのが妙に気になった。あまり金持ちらしくない振る舞いに見えたのだが、あれは正しいマナーだったのだろうか。マナー講師の意見を聞いてみたい。
スタッフ/キャスト
監督/製作 野村芳太郎
原作 わるいやつら(上)
出演 片岡孝夫/松坂慶子/梶芽衣子/神崎愛/藤真利子/宮下順子/米倉斉加年/梅野泰靖/小林稔侍/蟹江敬三/渡瀬恒彦/緒形拳/佐分利信/藤田まこと
音楽 芥川也寸志/山室紘一