★★★☆☆
あらすじ
盲目で口の利けない老人と暮らす若い女。一部の映画祭のみで上映された劇場未公開作。
感想
若い女と盲目の老人の奇妙な関係。そして、そこに若い男が現れて、という話。ただ分かりやすい男女の物語ではなく、抽象的な内容となっている。
良く分からなかったというのが正直なところだが、冒頭に隠れキリシタンの話が語られることからも、信仰だとか信じることだとか、そういった大きなものを描こうとしているのだろう。
助けがないと生きていけない山崎努演じる盲目の老人に献身的に仕える鈴木京香演じる女。しかし女の心にやがて邪心が生まれてしまう。それを象徴するのが安藤政信演じる男の存在だろう。宣教師をかくまっていた隠れキリシタンたちが、処罰を恐れて彼らを見捨ててしまったのとも重なる。それでも神は人々を見捨てて去ることはないように、老人もそうだということか。無理やり解釈するとこんな感じ。
二人の間に割って入る若い男は、安藤政信だから成立していると言っても過言ではない。ただ無言で近づいてきただけでも何か吸い込まれてしまいそうな力を持っている。説得力のある存在感だ。
そして、主演の鈴木京香がこの映画では異様にいい女に見えた。今から14年前だから当然若いというのもあるが、ショートカットだからというのもあるかもしれない。こんないい女だったっけと思ってしまうほど。この映画は彼女のいい女っぷりと山崎努の狂気じみた演技を楽しむ映画なのかもしれない。
タイトルの「こおろぎ」が、どこから来ているのかが気になった。隠れキリシタンの隠語かとも思ったが、そうでもないようだ。
スタッフ/キャスト
監督 青山真治
脚本 岩松了
出演 鈴木京香/山崎努/安藤政信/伊藤歩