★★★☆☆
あらすじ
駅で出会った二人組の謎の男女に娘を人質に取られ、選挙活動中の知事を暗殺するよう脅迫された男。
感想
謎の男らに娘を人質に取られた男が、ホテルで選挙活動中の知事の暗殺を強要される映画だ。犯人らは実行しなければ娘を殺すと脅している。だがそんなことをするくらいなら自分たちでやればいいのに、と先ず思ってしまう。ただこれは、自分たちがやったとバレると政治的な背景まで暴かれて、受けるダメージがデカくなってしまうからなのだろう。なんのつながりもない素人にやらせ、その口も封じてしまえば、目的は果たせるし、後顧の憂いもなくて都合が良い。
そんな犯人たちの要求にしぶしぶ従うフリをしながらも、主人公は常にピンチを脱する機会を窺っている。だが犯人がずっと自分のまわりをウロウロし、しかも知事の関係者の中にまでその一味がいることが分かってくると、うかつに動くこともできなくなってくる。じりじりともどかしい手に汗握る展開だ。
このにっちもさっちもいかない状況を脱したのは、主人公がなんとか助けを求めることができた一人の従業員だ。彼の主導によりホテルマンたちが大活躍する。ここからは主人公よりも、この従業員の機転の利いた動きが目立ち、まさに彼こそがヒーローだった。彼に協力する同僚たちの多さにも彼の人望の厚さを知ることができる。彼がいなければ主人公はどうすることもできなかっただろう。彼を主人公にした映画でも良かったかもしれない。
ラストは従業員らの協力に加えて、主人公の一か八かの思い切った行動が功を奏して窮地を脱することができた。終始、緊迫感があり見応えはあったのだが、主人公はよくやった、と喝采したくなるような爽快感はない。それよりも、あの時ああすればよかったとか、この時こうしてたらとか、もっと他にやりようがあったような気がすることばかりで、スッキリしない思いが漂い続けた。
特に、主人公が見張りの男を出し抜き、人質の娘のいるバンに近づいた時は最大のチャンスだった。この時はリスクを恐れて止めてしまったが、結局最後は運頼みだったのだから、それならここで一か八かの賭けに出るべきだったような気がしてならない。寝ている娘を大きな声で起こして呼び寄せるとかできたはずだ。ここで終わらせていれば、余計な被害者を出さずに済んだ。
見終わった後に、なぜかひとりで反省会をしたくなってしまう映画だ。世間にいる事件の被害者たちもこんな堂々巡りの後悔を、日々心中でくり返しているのかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督/製作 ジョン・バダム
製作総指揮 D・J・カルーソー
出演
クリストファー・ウォーケン/チャールズ・S・ダットン/ローマ・マフィア/マーシャ・メイソン/ピーター・ストラウス/グロリア・ルーベン