★★★★☆
あらすじ
かつては名を馳せるも今や落ちぶれてしまった映画監督の一週間。ロマンポルノ・リブート・プロジェクトの作品。
感想
タイトルにある「ジムノベディ」て何だろうと思って後で調べたら、エリック・サティのピアノ独奏曲の曲名だった。映画では、板尾創路演じる主人公の妻がよく家で弾いていた曲という設定で、劇中で何度も繰り返し流れる。今は病院で眠る妻だが、主人公の頭の片隅にはいつも彼女への想いがあるという事なのだろう。
そんな主人公の一週間が描かれる。最初は次から次へと女性と寝ていく主人公の女遍歴を見させられているだけ、という印象なのだが、次第に主人公の置かれた状況が明らかになっていき、それにともなって彼の心境も分かるようになってくるので、物語的面白さもちゃんとある。
映画監督が主人公という事で、この映画を撮った行定監督の日常を描いたものかと安直に考えてしまいたくなるが、きっとそんなわけはなく、監督の日常で芽生える願望や妄想を具現化して描いたものなのだろう。監督の日常業務をこなす日々の中で、ここからこんなことが起きたら興奮するな、みたいな。
だからなのか冷静に考えれば現実離れした話なのであるが、それを地に足ついたものにしているのは、なんといっても板尾創路の存在感だろう。何を考えているのかよく分からない得体の知れなさがある彼には、何が起きても不思議ではない雰囲気がある。毎日こんな感じで体力持つの?という素朴な疑問が浮かんだりもしたのだが、彼ならいけるか、となぜか思えてしまう謎の説得力があった。彼が主人公でなければ、そんなわけない、と呆れかえってそれで終わりだったかもしれない。
クライマックスは、どこか投げやりで、ふらふらと状況に流されるままだった彼の気持ちが理解できたような気になる病院でのシーン。しかし、病室で突然あんなことをしている場面を目撃して、まわりの人たちは咄嗟にあんな行動を取れるものだろうか。自分ならあり得ない光景に呆然としてしまい、見なかったことにして立ち去ってしまいそうだ。でも、面白いシーンではあった。
最後も上手くまとまっていて、意外と悪くない映画だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 行定勲
出演 板尾創路/芦那すみれ/岡村いずみ
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