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「吹けば飛ぶよな男だが」 1968

吹けば飛ぶよな男だが

★★★☆☆

 

あらすじ

 兄弟分たちと共に、都会にやって来た田舎娘を騙そうと企むも、気の毒になって助けてしまったチンピラの男。

 

感想

 いきなり世間知らずの女を山奥に連れ込んで襲おうとするエピソードから始まり、最初からなかなかエグい。これはさすがに同情した主人公の行動によって未遂に終わり、その後はほのぼのとしたコメディ映画になっていくのだろうと思っていたのだが、全然そんな事はなかった。主人公は結局女を風俗に売り飛ばしてしまい、その後も恐喝したり、指を詰めたり、人を刺したりとえげつない事ばかりが続く。

 

 主人公はあまり頭はよくないが、それでも気の毒な女を助けてやるくらい根は優しい男。なのになんでこんな事になるのかと思っていたのだが、段々と彼はこの世界しか知らないのだなということに気付いてきた。金を稼ぐと言えば恐喝などの犯罪行為しかなく、女が一人で生きていくには風俗しかないと思っている。つき合う人間も皆そんな人たちばかりで、そういう世界のルールの中で主人公は主人公なりに懸命に生きているというわけだ。

 

  

 そう考えるとなかなか物悲しい物語である。環境というのは本当に大事だ。でも意外と、その世界の中にいるとそれが普通と思ってしまいがちだ。別の世界があることに気付けない。世襲の政治家が庶民の実感にそぐわない発言をして反感を買ってしまうのもそういうことだろう。そしてSNSでも、自分の半径数メートルの観測範囲だけで「普通」や「常識」を判断してしまい、別の世界の住人が存在することすら気付かず、無意識に彼らを傷つけるような発言をしてしまっている人たちは多い。

 

 クライマックスは女を襲った悲劇。嘆き悲しむ主人公ではなく、その彼を見守る周囲の人々の反応を見せることによって、より悲壮感を際立たせる演出は見事だった。なかでもミヤコ蝶々のなんとも言えない表情が良かった。

 

 「男はつらいよ」との類似性がいくつか見られる映画だが、決定的な違いは一線を超えるかどうか。プラトニックな恋に代表されるように、寅さんは一線を越えることはなかったが、この主人公は女には手を出すし、犯罪も犯す。こちらの方がリアルなのだが、それがえげつなさとなってしまってほとんど笑えなかった。当時の人たちはこれでも笑えたのだとすると、同じような環境にいる人たちが多かったのかと色々と考えてしまう。

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スタッフ/キャスト

監督/脚本

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脚本 森崎東

 

出演 なべおさみ/緑魔子/犬塚弘/芦屋小雁/佐藤蛾次郎/谷よしの/小沢昭一/有島一郎/ミヤコ蝶々

 

音楽 山本直純

 

吹けば飛ぶよな男だが - Wikipedia

 

 

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