★★★☆☆
あらすじ
家を建てた新婚夫婦は、ローン返済のために二階部分を貸しているが、その下宿人に悩まされてばかりいた。
山田洋次監督の初監督作品。56分。
感想
二階の下宿人に悩まされる新婚夫婦の悲喜こもごもが描かれる。最初の下宿人はなかなか家賃を払ってくれない夫婦だ。なんやかんやと言い逃れをしては先延ばしにしようとするが、人の好い夫婦は強く出ることができない。
しかし当然支払われるべきお金を催促しているだけなのに、支払わない方が絶対的に悪いのに、なぜか催促する側が金に細かくて汚い奴みたいになってしまうのは理不尽で納得がいかない。相手もなぜか開き直って、払わないとは言っていないのにしつこいな、みたいな面倒くさそうな顔をしたりして、たまらない気持ちにさせられる。なぜか立場が逆転してしまう不思議さを描いているのだろうが、愉快さよりも心痛ばかりが募る。
次の下宿人は金回りの良い夫婦だ。主人公夫婦よりもいいものを食べ、いい暮らしをしている。今度は生活レベルの違いを間近で見せられて、嫉妬でヤキモキする様子が描かれる。だが、金をめぐって汲々としていた前半よりは大らかな気持ちで見ることができる。
これだけでもデフレよりインフレのマインドの方がいいことが分かる。主人公も気が大きくなって、下宿人夫婦に借金を申し込む始末だ。お金があると思うとポジティブな気持ちになれるものだ。
しかし裕福な下宿人夫婦には裏があった。結局主人公夫婦は彼らのことで気苦労をすることになる。他人と金はいつも悩みの種だ。
ユーモアがあり、ヒューマンもある人情劇だが、メインとなるのが金にまつわる話なので、心が苦しくなってあまり楽しめなかった。もしかしたら当時の観客たちは金に困ることに慣れていたので、ストレスを感じることなく素直に楽しめたのかもしれないが。
スタッフ/キャスト
監督/脚本
脚本 野村芳太郎
原作 「二階の他人」 多岐川恭
出演 小坂一也/葵京子/高橋とよ/野々浩介/穂積隆信/平尾昌章/関千恵子/須賀不二男
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