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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「『男はつらいよ』50年をたどる。」 2019

『男はつらいよ』50年をたどる。

★★★☆☆

 

内容

 国民的映画「男はつらいよ」の50年を振り返る。

 

感想

  山田洋次が監督になるまでの半生が書かれていて、戦前戦中は満州で運転手やお手伝いさんがいるような裕福な暮らしをし、戦後は一転して日本で貧しく苦しい生活を送ったというのは知らなかった。学者先生や日本画の大家、お殿様といった偉いとされている人たちに、寅さんが気さくに話しかけてすぐに仲良くなってしまうというのは、シリーズでよく見られる個人的に好きなシーンなのだが、これは監督のそういった生い立ちが影響しているのかもしれない。

 

 金持ちというだけで皆が勝手に遠慮して距離を取るので寂しい思いをしたり、貧しいからというだけで人々に顧みられない悲しい思いをしたり、といった両方の立場を経験したことで、人間には立場や身分なんてものは無く、誰とでも対等に接するべきだという信念が生まれたのかもしれない。

 

 

 そして、シリーズで個人的に少し苦手ないわゆる尾籠な話、糞尿譚が良く出てくるのも、監督の貧しい時の体験から来ているという事が良く分かった。貧しく苦しい時でも笑いがあれば何とかやっていける。そしてそんなときに彼らが笑いの材料にするのが下ネタ。庶民の笑いには不可欠なネタという考えから来ている。確かに全世界で通用するネタと言える。

 

 寅さんのプラトニックな女性観もどう判断するべきか迷うところではあるが、著者が言うように世知辛い世の中に現れた一人の高僧、みたいに捉えると納得できる部分はある。人々が悩んだり争ったりしているところに現れて、新たな視点を与えたり、忘れてかけていた原点を思い出させる。もはや普通の人とは違う地平線に立っている人。そんな人が女性と常に一定の距離を保つというのはあり得るかもしれない。

 

 読んでいると、寅次郎は渥美清のキャラクターあってのものではあるが、やはり監督である山田洋次の分身なのだなと強く感じるようになった。マンネリだなんだと時に批判されながらも、それでも常に一定のレベルを保って作り続けられたのは、本当に驚異としか言いようがない。

 

 興味深く面白い本ではあるが、タイトルから勝手に予想したような、第一作目から映画や制作現場で起きた出来事や変化を順に辿っていくというような内容ではなかった。著者はほぼ山田洋次と同年代で、映画の制作現場にも出入りしていたようなので、監督や渥美清だけでなく、他の出演者や現場の人たちの様子や声なども聞きたかった。

 

著者

都築政昭 

 

『男はつらいよ』50年をたどる。

『男はつらいよ』50年をたどる。

 

 

 

登場する作品

映画館(こや)がはねて (中公文庫)

映画をつくる (国民文庫 840)

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運が良けりゃ

「意地のすじがね」 北島三郎

男はつらいよ 寅さん読本―監督、出演者とたどる全足跡

宮本武蔵(1) (吉川英治歴史時代文庫)

「怪談宋公館」 火野葦平

新装版 渥美清 わがフーテン人生

寅さんの教育論 (岩波ブックレット NO. 12)

「世界の映画作家14」 キネマ旬報社

寅さん、ありがとう!!「それを言っちゃあ、おしまいよ!!」―渥美清よ永遠に

ローマの休日(字幕版)

喧嘩辰  (MEG-CD)

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同胞(はらから)

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*「桜の園」

「少年講談全集」 大日本雄辯會講談社編

源氏物語(1) 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

好色一代男 (中公文庫)

津軽

東海道中膝栗毛 上 (岩波文庫 黄 227-1)

日本映画の現在 〜講座日本映画 (7)

可愛い女(かわいい女)」

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男はつらいよ 2 (立風寅さん文庫)

戦争と平和 (一) (岩波文庫)

卒業 デジタル修復版(字幕版)

山田洋次作品集 (8)

「白蘭の歌」

「路傍の石」 監督 田坂具隆

「落語全集」 大日本雄辯會講談社

マッチ売りの少女 【日本語/英語版】 きいろいとり文庫bookcites.hatenadiary.com

二階の他人

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<あの頃映画> あの橋の畔で 第一部 [DVD]

九ちゃん音頭 [DVD]

 「庭にひともと白木蓮」  藤原審爾

「観客はいつも先生だ」 マガジンハウス

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静かなる決闘

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白痴1 (光文社古典新訳文庫)

白痴

若き実力者たち

一握の砂

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 「病める俳人への手紙」 柳田國男

高倉健インタヴューズ: 日本で唯一の貴重なインタヴュー集 (小学館文庫プレジデントセレクト)

ロビンソン漂流記(新潮文庫)

クオレ物語 (世界名作童話全集 55)

小公子 (岩波少年文庫)

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学校Ⅱ

 

 

登場する人物

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