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「短編ミステリの二百年〈2〉」 2020

短編ミステリの二百年2 (創元推理文庫)

★★★☆☆

 

内容

 江戸川乱歩による「世界推理短編傑作集」以降に書かれた作品も含めて厳選した短編ミステリ集。シリーズ第2巻。

 

感想

 前巻ではいまいちピンと来ない結末の作品が多かったが、今作ではちゃんと腑に落ちる作品が多く、どれも読みごたえがあった。前巻より現代に近い作品のせいだろうか。この時代に、現在よく読まれているようなミステリ作品のスタイルが出来上がったのかもしれない。

 

 

 今作の中では、レックス・スタウトの「探偵が多すぎる」が特に面白かった。なんとなく可笑しみのあるタイトルだが、州による探偵業者の調査のために当事者たちが集められた場で発生した殺人事件の犯人探しが描かれる。どんな職業でも例会などで同業者が集まる機会は大体あるので、探偵たちが集うことがあってもそんなにおかしな話ではないのだろう。

 

 もっと探偵たちが寄ってたかってそれぞれの推理を披露し合い、ワチャワチャして収拾がつかなくなるのかと思ったが、実際は主人公の名探偵ネロ・ウルフがほぼ一人で推理をしていく。最初は探偵たちの中に犯人がいると思わせておいて、それぞれの状況を確認し、事態を整理しているうちに、次第に別の人物が浮かび上がってくるのがスリリングだ。主人公が渋々といった感じで、でも実は内心嬉しそうに皆の打ち上げに参加する旨を伝えるラストも良い。

 

 どの短編もそこそこに楽しめて、読後の気分は悪くなかったのに、その後に始まる編者による250ページにも及ぶ短編ミステリの評論が、前巻に引き続きつらかった。ちょっと短編ミステリの世界でものぞき見してみるかと軽い気持ちで手を出した素人に、冷や水を浴びせるようなディープな内容だ。これは素人が無理して読まないほうがいいかもしれない。次巻を読む気が失せてしまいそうだ。

 

著者

バッド・シュールバーグ/クリストファー・ラ・ファージ/ラッセル・マロニー/ダシール・ハメット/ラウール・ホイットフィールド/レイモンド・チャンドラー/フランク・グルーバー/レックス・スタウト/マージェリー・アリンガム/エドマンド・クリスピン/ロイ・ヴィカーズ

 

 小森収

 

収録作品

「挑戦」 バッド・シュールバーグ

「プライドの問題」 クリストファー・ラ・ファージ

「チャーリー」 ラッセル・マロニー

「クッフィニャル島の略奪」 ダシール・ハメット

「ミストラル」 ラウール・ホイットフィールド

「待っている」 レイモンド・チャンドラー

「死のストライキ」 フランク・グルーバー

「探偵が多すぎる」 レックス・スタウト

「真紅の文字」 マージェリー・アリンガム

「闇の一撃」 エドマンド・クリスピン

「二重像」 ロイ・ヴィカーズ

 

 

 

登場する作品

「クッフィニャル島の略奪」

「海の王(The Lord of the Sea (English Edition))」

 

「待っている」

最後の人【淀川長治解説映像付き】 《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

「青い鳥(1918)」

 

「死のストライキ」

風と共に去りぬ(第1巻~第5巻) 合本版

 

 

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