★★☆☆☆
あらすじ
チャイナタウンのマフィア同士の抗争が激化する中、アジア人ばかりの対策チームに白人警官が加わることになる。原題は「The Corruptor」。
感想
チョウ・ユンファ演じるエース刑事と、彼とコンビを組むことになったマーク・ウォールバーグ演じる若手刑事の緊張感のある関係が描かれていく。エース刑事は古くからのチャイナマフィアと持ちつ持たれつの関係を築いており、それに気づいた若手刑事は不信感を持つ。
だがマフィアの抗争が進展し、チャイナタウンの事情が分かって来るにつれ、若手刑事の考え方は変わっていく。そしてそれと共にエース刑事との関係性も変化していく。面白くなりそうなプロットなのだが、おそろしく物語に推進力がない。とても冗長に感じてしまう。おそらくその原因は、二人が何をしたいのかがまったく見えないからだろう。
エース刑事は馴染みのマフィアと連携をとり、様子を見ながら良きところで丸く収めようとしているだけだし、若手刑事は状況に流され丸め込まれていっているだけだ。二人ともこうしたいという明確な目的を持っておらず、ただ起きたことに対してリアクションをしているだけなので、見ているこちらも何を期待して見ていいのか分からず、ただ眺めるしかない。目的が見えない物語はつらい。
登場人物の中で唯一やりたいことがよく分かったのは、敵も味方も出し抜いて天下を取ろうとしていた一人のマフィアだけだ。観客を含めて皆が彼に振り回されていただけとも言える。彼が主役だったらきっとこの映画は面白いものになっていたはずだ。
アジア人はミステリアスだ、彼らと上手く付き合うには清濁併せ呑むことが大事なのかも、とでも言うようなラストは、いくらなんでも安易すぎだろう。そこで思考停止しないで、もっと踏み込んで理解しようと努力しようよ、と思ってしまった。多分、今だとこんな感じの映画は作られないような気がする。
振り返ると、何の面白みもなく長々と続いたタイトルバックは、この映画の内容を暗示していたのだなと、しみじみとした気持ちになる。
スタッフ/キャスト
監督 ジェームズ・フォーリー
出演 チョウ・ユンファ/マーク・ウォールバーグ/リック・ヤン/ポール・ベン=ヴィクター/バイロン・マン/ブライアン・コックス
音楽 カーター・バーヴェル