★★★★☆
あらすじ
前作から10年後の世界。荒れ果てた生活を送っていた英雄の息子で元軍人の男は、たまたま出会った少女とともに逮捕されてしまうが、釈放の条件によって軍に戻り、ロボットパイロットの教官となる。
シリーズ第2作。111分。
感想
今作の主人公は、前作で英雄的行為で死んだ司令官の息子だ。父と同じ軍人の道を歩むも途中でドロップアウトし、今は自堕落な生活を送っている。偉大な父親の存在にプレッシャーを感じていた男が、軍に戻って成長していく。
怪獣を封じ込めた世界なので、前半、怪獣は登場しない。その代わりに描かれるのは暴走した無人ロボットとの戦いだ。ロボット同士の戦いが繰り広げられて、ロボットものアニメのような趣がある。怪獣の脳と結合して有機的となったロボットは、ヱヴァンゲリヲンのようだった。
この無人ロボットの暴走は、中国系企業の陰謀かと思わせておいて実はそうではなかった、というのは巧みな展開だった。その前に女社長が無人ロボットの攻撃に巻き込まれているので、そうだとしたら辻褄が合わないようにもなっている。
こういう悪い役は、ヤバい奴にやらせておけば大体大丈夫だ。この女社長は、その後主人公らのピンチに颯爽と現れて、救世主みたいな存在になっている。さすが中国企業が製作に金を出しているだけのことはある。
日本も、調子が良かった時にこういうイメージ戦略をすればよかったのにと思うが、今さら後の祭りだ。金は出すが口は出さなかったと好意的にとらえるべきかもしれない。
後半はついに怪獣が現れて、ロボットものから怪獣ものへとシフトする。なんとなくクライマックスは、適当な怪獣三体を見繕ってみた、みたいな自作自演感があるが、それでも三体の怪獣が一堂に会するところなどは「怪獣大戦争」のようなワクワク感があった。
主人公の境遇や、ヒロインの女の子の訓練の様子や最後の戦いに加わる経緯などは日本のアニメっぽいし、最後の舞台が富士山だったりガンダムが登場したりと、日本のアニメや特撮に対するリスペクトがしっかりと感じられる映画だ。ロボットや怪獣の動き、その撮り方など、ちゃんと「分かっている」のが伝わってくるシーンが随所にあって、日本人としては嬉しくなってしまう。
ただ、ロボットを乗り捨ててしまうラストには、日本とアメリカの違いを感じた。ロボットはあくまでも道具に過ぎず、壊れてしまったらまた作ればいいだけ、という合理的な発想はアメリカぽい。ロボットの顔がいまいち印象に残らず、魅力に欠けるのはそのせいかもしれない。これが日本だったらロボットに過剰に感情移入して、美学として一緒に死んでしまったような気がする。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/原案 スティーヴン・S・デナイト
製作 ケイル・ボイター/ギレルモ・デル・トロ/ジョン・ジャシュニ/フェミ・オーガンズ/メアリー・ペアレント/トーマス・タル
製作/出演 ジョン・ボイエガ
出演 スコット・イーストウッド/ジン・ティエン/ケイリー・スピーニー/菊地凛子/バーン・ゴーマン/アドリア・アルホナ/マックス・チャン/チャーリー・デイ/カラン・ブラル/新田真剣佑
パシフィック・リム: アップライジング - Wikipedia
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