★☆☆☆☆
あらすじ
1930年代アメリカ。戦友の弁護士に頼まれ、不審死した将軍の解剖を行った医師の男は、巨大な陰謀の存在に気付くようになる。
実際にあった事件「ビジネスプロット」を題材にした作品。134分。
感想
不審死した将軍を解剖した主人公の医師が、軍隊時代の仲間と共に背後にある陰謀の存在に気付いていく物語だ。気取った調子でトボけた笑いを散りばめながら進行していく、そんなつもりだったのだろうが、まったくもってスベり散らかしている。
笑わすつもりのシーンがとにかく面白くない。しかも、笑わそうとしているのは分かるけど笑えない、ではなく、これのどこに笑える要素があるの?と思ってしまうようなものばかりだ。それがずっと続くのでかなりしんどかった。
ストーリーもぼんやりとしている。主人公らは、将軍の解剖後に起きた事件で濡れ衣を着せられてしまったので、逃亡しつつ真犯人を探す展開かと思っていたのに、翌日普通に仕事に行っているし、やってきた警察を追い払っているしで緊迫感がゼロだ。この事件の真犯人を必死に探すわけでもなく、将軍の死の真相を真剣に調べるわけでもない。
彼らはよく分からないまま、ただ流れに身を任せて動いているだけだ。そこに強い動機は何もなく、具体的に何をやりたいのかが全く見えない。貧弱なストーリーにただでさえイライラしているのに、面白シーンに仕立てようと各シーンでいちいちつまらない小細工をしてくるのだからたまらない。とてもストレスがたまった。
そしてこれら一連の事件に、軍隊時代に知り合った主人公ら三人組の物語を絡めているのだが、特にそれが効果を発揮しているようには見えなかった。むしろこの三人にどうして絆が生まれたのかピンと来ず、それが気になって余計なモヤモヤを抱えてしまった。恋人同士、戦友同士の関係は分かるが、看護婦と兵士の関係が解せない。他に患者の兵士なんてたくさんいたはずなのに、なぜこの三人だったのか。
クライマックスも、何を期待してどこに注目すればいいのか分からないまま始まり、何の感慨が起きることもなく終わった。その後に続く後日談も無表情で眺めるしかなかった。何もかもがぼんやりと曖昧だ。
ただこの映画は、豪華な出演陣、当時を再現した衣装やセットなど、映像だけは素晴らしい。面白そうな雰囲気だけはたっぷりと漂わせているので、その分地獄のようにつらかった。音楽もあざとさがあってそれほど良くはなかったので、音も字幕も消してしまって、映像のみを眺めるのが一番ストレスなく楽しめる方法かもしれない。なんなら自分で脳内補完するストーリーやセリフの方が出来がいい可能性だってある。
実際にあった事件を当時の世相を交えつつ風刺とユーモアたっぷりに描いて、最後は深い余韻が残るコーエン兄弟やウェス・アンダーソンのような映画を目指したのかもしれないが、すべてが中途半端で失敗している。題材となった事件すら、結局どんなものだったのかよく分からない。映像は最高、ストーリーは最低の作品だ。ちょい役のテイラー・スウィフトが退場した序盤のシーンが、笑い的にも物語的にもピークだった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 デヴィッド・O・ラッセル
製作/出演 クリスチャン・ベール
出演 マーゴット・ロビー/ジョン・デヴィッド・ワシントン/ラミ・マレック/マイク・マイヤーズ/アニャ・テイラー=ジョイ/ゾーイ・サルダナ/アンドレア・ライズボロー/クリス・ロック/マイケル・シャノン/マティアス・スーナールツ/アレッサンドロ・ニヴォラ/テイラー・スウィフト/エド・ベグリー・ジュニア/ティモシー・オリファント/リーランド・オーサー/エヴァ・オット - コリーン・キャンプ
音楽 ダニエル・ペンバートン
撮影 エマニュエル・ルベツキ