★★★★☆
あらすじ
60年代から活躍するミュージシャン、エルトン・ジョンの伝記映画。
感想
主人公が、冒頭の登場シーンでものすごい衣装を着ていて思わず笑ってしまった。だがこれは別に悪ふざけをしているわけでもなんでもなく、実際にエルトン・ジョンが着ていたステージ衣装を忠実に再現しただけなのだからすごい。
製作陣が彼をよく知らない人たちに謂れのない批判をされるのを恐れたのか、エンドロールで実際のエルトン・ジョンの写真を見せて、彼は本当にこんな格好をしていたんですよ、小馬鹿にしていませんよ、と必死にアピールしていたのが面白かった。
エルトン・ジョンの少年時代からの半生が、ダイジェスト的に描かれていく。彼の数々のヒット曲を使ってテンポよく進むミュージカルなので、純粋に楽しめる。
主人公がデビュー前にアメリカから来たソウル・グループのバックバンドを務めるシーンがあったが、後でこのグループがアイズレー・ブラザーズとパティ・ラベルだったと知って驚いた。今考えると意外ですごい組み合わせだ。このステージを見た人たちが羨ましい。ただきっとその当人たちは何も感じていなかっただろうが。
やがて主人公は、その後コンビを組むことになる作詞家バーニー・トービンと出会い、成功への階段を駆け上がっていく。しかしこの時プロデューサーが、共作する二人に一緒に住めと指示したのがちょっと意味不明だった。なにも一緒に住まなくても共作くらいできるだろうと思ってしまったが、当時は今と違って連絡に時間がかかるので、たくさん曲を作らせようとしたらそれくらいしないといけなかったのかもしれない。
成功を掴んだ後の主人公は、スター物語の定番、自暴自棄な私生活でボロボロになっていく。このあたりから少し面白みがなくなってしまうが、そもそもここは暗い話なので仕方がない。
それでもどん底から這い上がり、主人公が復活して映画はエンディングを迎える。これを見ていると、彼のようなスターが立ち直れるかどうかは運でしかないことがよく分かる。彼にも何度か人生が終わっていたかもしれない瞬間があったし、他の成功に溺れて若くして死んでいったスターたちだって、ほんの少しの運があれば生き延びて立ち直り、今も活躍していたかもしれない。人生なんて些細なことで大きく変わってしまう。
一応、主人公の両親との関係や性的指向の悩みなど、本人の内面に迫る部分はあるのだが、全体的には曖昧にぼんやりとしか描かれていないような印象がある。このあたりはエルトン・ジョン本人が制作に関わっていることや、多くの関係者が存命中だということが影響しているのかもしれない。
それでも、エルトン・ジョンが多くの人が思っているより遥かにレジェンド的存在であることを、ちゃんと教えてくれる映画にはなっていた。
スタッフ/キャスト
監督 デクスター・フレッチャー
製作 アダム・ボーリング/デヴィッド・ファーニッシュ/デヴィッド・リード/マシュー・ヴォーン
製作総指揮 マイケル・グレイシー/エルトン・ジョン/ブライアン・オリヴァー/クラウディア・ヴォーン/スティーヴ・ハミルトン・ショウ
出演 タロン・エガートン/ジェイミー・ベル/リチャード・マッデン/ブライス・ダラス・ハワード/ジェマ・ジョーンズ/スティーヴン・グレアム/スティーヴン・マッキントッシュ/テイト・ドノヴァン/チャーリー・ロウ
登場する人物
エルトン・ジョン/バーニー・トーピン