★★★★☆
あらすじ
クイーンのボーカリストとして成功をおさめたフレディー・マーキューリーの伝記映画。
アカデミー賞主演男優賞、編集賞。134分。
感想
主人公であるフレディー・マーキュリーがバンドに加わり、「クイーン」として活動を始めるところから物語はスタートする。 彼の音楽的な素養や能力に関する説得力のある説明はなく、それらは当然備えているという前提で描かれていく。
クイーンの数々のヒット曲が出来上がる瞬間が描かれていて、とても興味深い。それと共に誰もが知っているような有名なヒット曲がたくさんあることを改めて思い知り、すごいバンドだったのだなと再確認させられる。どのメンバーも作詞作曲をして、それぞれにヒット曲もあるというのは意外だった。
バンド活動と共に描かれるのは、フレディーのセクシャリティーだ。結構ゴリゴリと描いている。彼が自分がゲイであることに気付き、それまで付き合っていた運命の人と言っていた女性と別れるのだが、その後も彼女を自分の元に置いておこうとしたのはさすがにわがまま過ぎった。当然そんな事は出来ないわけで、彼女は新しい恋人を作り、フレディは孤独を感じるのだが、それは仕方がない話だ。運命の人というよりも、信頼できる親友が欲しかったということなのだろう。
そしてこの手の物語で定番なのは、成功後のバンド内での揉め事だ。当然、クイーンでも起こるのだが、罵り合う醜い争いではなかった。とてもジェントルな雰囲気で繰り広げられて、大人だなと思ってしまった。彼らがインテリだからなのか、本物のメンバーがこの映画の製作に関わっているからなのか。バンドが和解するときの穏やかなシーンも良かった。
ここまでで主人公の音楽に対する想いや苦悩、セクシャリティーや私生活の問題、バンドの成功とそれにより生じた数々の問題などが色々と描かれているが、どれも表面的で芯を食っていないような印象がある。さらには、彼の死因となったエイズの話も出てくるが、これもあまり深く掘り下げない。
少し物足りなさを感じない訳でもなかったが、ここからが凄かった。バンドメンバーに自身の病気を告げる主人公の気丈さに胸を打たれてからの、圧巻のライブシーン。そこで歌われる曲の歌詞が、主人公のシチュエーションとリンクして、心が熱くなっていく。渾身のパフォーマンスとそれに熱狂する大観衆。怒涛の展開に盛り上がらざるを得ない。
結果、大満足して見終えたわけだが、映画というよりもクイーンというバンドがすごいだけなのではないか、と思わないでもない。それから、スポーツの試合ではなく、コンサートで観客と共に「We Are The Champions」を大合唱するのはいい光景だった。皆が勝者の誇り高さをもって生きようとのメッセージが強く感じられる。勝利の凱歌というよりも、もはや人間賛歌だ。それを皆で共有する高尚な空間となっていた。
スタッフ/キャスト
監督 ブライアン・シンガー
脚本/原案 アンソニー・マクカーテン
製作 グレアム・キング/ジム・ビーチ/ピーター・オーベルト/ブライアン・メイ/ロジャー・テイラー
製作総指揮 アーノン・ミルチャン/デニス・オサリヴァン/ジェーン・ローゼンタール/デクスター・フレッチャー
出演 ラミ・マレック/ルーシー・ボイントン/グウィリム・リー/ベン・ハーディ/ジョゼフ・マゼロ/エイダン・ギレン/トム・ホランダー/アレン・リーチ/マイク・マイヤーズ/アレン・リーチ/アーロン・マカスカー/アダム・ランバート
音楽/編集 ジョン・オットマン
登場する人物
フレディ・マーキュリー/ブライアン・メイ/ロジャーテイラー/ジョン・ディーコン/ボブ・ゲルドフ/ケニー・エヴェレット/ティム・スタッフェル
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