★★★☆☆
あらすじ
カナダ人お笑いコンビの、子供たちに悪影響を与えるコメディ映画を問題視してPTAが始めた抗議運動は、やがてカナダとの全面戦争へと発展していく。
人気アニメシリーズの劇場版。
感想
とある映画がPTAに教育上よろしくないと糾弾されたことから始まる物語だ。このアニメシリーズ自体がそんな感じの存在なので、自らをネタにした映画と言える。先回りして相手をおちょくろうとしているわけで、さすがの太々しさだ。しかし最終的にカナダがそのターゲットになってしまい、全面戦争を始めてしまうのには笑ってしまった。
大げさ過ぎて面白いのだが、SNSなどで憎悪やヘイトをまき散らして怒っている人は大抵これだ。話が飛躍しすぎていたり、藁人形をこしらえているだけだったりする。映画はうまくこの手の人々を皮肉っている。
しかしこんなことで戦争を仕掛けられてしまうなんて、カナダには迷惑な話だ。アメリカとカナダの関係性や両国が互いにどんな印象を持っているのか等は全然わからないが、洒落でこんなことをやっても大丈夫なくらいの友好度はあるということなのだろう。日本もそうだが、フィクションでもこんなことをしたら洒落にならなさそうな隣国を持つ国はたくさんある。
メインの4人を始め、おなじみのキャラクターたちが期待通りの動きを見せてくれる映画だ。各シーンでの風刺の効いたジョークやブラックジョークもいつも通り面白い。個人的には芸能一家であるアレック・ボールドウィンらのボールドウィン一家がカナダに爆撃され、次にパトリシア・アークエットらのアークエット一家が爆撃されたシーンが笑えた。カナダの狙いはそこなの?と思わずツッコみたくなる。
他にもなんでミュージカル?とか、なんで巨大なそんなものが現れるの?とか、へらへら笑って見ていられるポイントは多く、コメディ映画としてのレベルはかなり高い。ただ、さすがにこれが長時間続くとしんどいものがあった。やはりこの手のものは30分ぐらいがちょうど良いのかもしれない。普通にテレビで三回に分けて放送されていたら、大満足できていたような気がする。
日本でもこんな感じで時事ネタを取り上げ、風刺や皮肉、ブラックジョークなどを交えたアニメがあったらいいのにと思うが、継続的に作るのは大変だし、すぐに炎上しそうでリスクも高いしで、誰もどこもやりたがらないのだろう。何よりこれらを笑いに変えるには高い知性が必要で、見る側にもそれがないと成立しない。それに、そもそも今現在それがないということは、この分野を育てるような土壌もないわけで、かなり難しそうだ。
中でも現在の日本では政治ネタを扱うのが難しそうな空気があるが、よく考えるとそれって独裁国家や宗教国家と同じだよな?と思ったりもする。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/出演(声) トレイ・パーカー
脚本/製作/出演(声) マット・ストーン
出演(声) マイク・ジャッジ/メアリー・ケイ・バーグマン/アイザック・ヘイズ/ブレント・スパイナー/デイヴ・フォーリー