★★★☆☆
あらすじ
ネット動画で話題になった男を町長選に出馬させ、伝統的に共和党が強い田舎町での次期大統領選の足がかりを作ろうとする民主党の選挙参謀の男。
原題は「Irresistible」。
感想
選挙を題材にしたコメディ映画だ。民主党選挙参謀の主人公が、共和党が強い田舎町で巻き返しの足掛かりを図ろうとワシントンからやって来る。アメリカの選挙制システムに詳しいとより良いのだろうが、そうでなくてもそれなりに楽しめる。
田舎と都会のギャップや、選挙や政治システムの問題点、ネット世論やメディアの態度など、様々なトピックを取り上げて笑いに変えていく。中でも平気で嘘をつき、決して反省しないメディアや、暴言を放っても素直に認めず開き直る主人公など、謝ったら負け、の風潮を茶化しているのは面白かった。日本でも見慣れた光景になってしまっているが、これは世界的な傾向なのかもしれない。
それから世間で注目されているとはいえ、田舎の町長選挙でも当然のように彼らがネットツールを活用しまくっていることに感心した。自分たちをアピールするのに便利なツールは積極的に活用していく姿勢がある。自分をアピールするよりも選挙が盛り上がらないことを望み、便利なツールも利権につながるかどうかにしか興味がないどこかの国とは大違いだ。
とはいえ、主人公らが選挙を戦う田舎町は電話回線しかなく、快適なWi-Fiが飛んでいる場所に車で移動し、大の大人たちがすし詰めの車内でPC作業をするシーンは面白かった。
両陣営の運動が激化し、白熱していった選挙は思わぬ結末を迎える。主人公らが高度なITを駆使して立てられる作戦は、精度が高くて効率的なのだろうが、なんとなく反感も覚えてしまう。勝手に「白人貧困層」などとレッテルを貼られ、こいつらにはこれをやっておけば間違いないから、とか言われたら、いい気持ちはしないだろう。
そんな気持ちに応えてくれるラストだっだが、爽快感はなかった。主人公目線で見ていたからか、それでは町民たちも選挙を愚弄しているようなものではないか、と疑念を持ってしまったからか。アメリカの現状に危機感を持ち、風刺や皮肉を散りばめた映画が作られること自体は素晴らしいと思うが、出来としてはいまひとつの印象だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ジョン・スチュワート
製作総指揮
クリスティーナ・オー
出演 スティーヴ・カレル/ローズ・バーン/クリス・クーパー/マッケンジー・デイヴィス/ウィル・サッソー/トファー・グレイス/ナターシャ・リオン/デブラ・メッシング/ビル・アーウィン