★★★☆☆
あらすじ
先輩の尻ぬぐいで街角でアンケートを取っていた男は、それに応じてくれたある女性に恋をする。
感想
出会いが生み出す不思議な縁が描かれる物語だ。登場人物がたくさんで、ヒロインのはずの多部未華子の出番が少ないくらいの群像劇となっている。彼らが出会い、つながることで様々な思いが伝播していく。その様子を見ながら終始引っ掛かったのは、セリフの収まりの悪さだ。おそらく原作の会話をそのまま使ったのだろうが、文章と映像では伝わり方、感じ方が違ってくる。ちゃんと映画用にセリフはアレンジするべきだった。
映画のテーマである「出会い」だが、それについて問いかけたい内容がすごい分かりづらかった。もうちょっと伝え方を工夫して欲しかったが、まずその概要を語らせた友人役の矢本悠馬のミスキャスト感は否めない。なんだか偉そうでいい加減なことばっかり言っているけどたまに芯を食ったことを言う、みたいな憎めないキャラのつもりだったのかもしれないが、かなり憎たらしさが出てしまっていた。その時点であまりまともに話を聞く気になれない。説得力を出すためには、おそらく男前度がもっと必要だったのだろう。
それからプロボクサーの男が物語のカギを握っているのだが、ボクシングシーンはショボいし、これもまたミスキャスト感があって、そこにあまり熱くなれなかった。かなり重要な部分なのだからもっと力を入れればいいのに、なんでこんなに適当なのだろうか。
それに主人公はこのボクサーと知り合いのはずなのだが、彼の一世一代の大試合にまったく関心を示さず、見る気がさらさらなかったのはどうなの?と疑問だった。見ないにしてもせめて結果を気にするとかあるだろう。薄情だ。
肝心の主人公とヒロインの恋愛も、要領を得ないエピソードが続き、グッとくることはなかった。ヒロインが呆れたプロポーズシーンは、これはこれでロマンチックだろう、とヒロインの態度になんだか腹が立った。10年も付き合っているのだから当然なのかもしれないが、二人の間に漂う冷ややかな空気がなんか怖かった。
結局何が言いたいのだ?と思ってしまうような雰囲気重視に感じる映画ではあるが、ほどよい複雑さの人間関係を紐解き、そのつながりを楽しむことは出来るので、退屈することなく見ることは出来た。それなりに満足して見終わった後、疑問やら不満やらが次から次へとムクムクと湧き出てくるタイプの映画だ。
スタッフ/キャスト
監督 今泉力哉
脚本 鈴木謙一
原作
出演 三浦春馬/多部未華子/矢本悠馬/森絵梨佳/恒松祐里/萩原利久/成田瑛基/八木優希/こだまたいち/MEGUMI/柳憂怜/濱田マリ/藤原季節/中川翼/祷キララ/伊達みきお/富沢たけし/貫地谷しほり/原田泰造
音楽 斉藤和義
アイネクライネナハトムジーク (小説) - Wikipedia