★★★★☆
あらすじ
未来からの攻撃を阻止する集団にスカウトされ、世界を破滅から救おうとする元CIAの男。
感想
時間を行ったり来たりしながら、世界を救うために主人公らが戦う。まず、いわゆるタイムスリップのように時空を飛び越えるわけではなく、ただ時間を逆行させるだけの設定が面白い。3日前に戻るには3日かかる。その間すべてのものは逆再生となり、車は後ろ向きに走り、死んだ人間は生き返る。
ただそれを理解したつもりでも、実際に映像で見ると非常に混乱する。時間を逆行している時にこう見えるということは、つまり順行している人間にはどう見えるのだ?と必死に考えているうちに訳が分からなくなってくる。だがその非日常的で奇妙な映像には、ワクワクさせられるものがあった。
この手のタイムスリップものにはありがちな矛盾もあるような気がする。特に順行する人間と逆行する人間が出会っても、長時間のやり取りは成立しないように思えて腑に落ちなかった。ただ「*できる限り理に適った設定になるように努力はしているが、それでもつじつまが合わないように感じる部分は出てくるだろう。それはもう気にするな、感じろ。」というメッセージが物語のあちこちに散りばめられているのを感じる。仏頂面で「その指摘はあたらない」などと意味不明の弁解をされるよりは全然好感が持てる。正しさなんかより面白さが重要だ。
正直なところ、一度見ただけではよく分からない個所が多かった。それでもターゲットを大型車で囲んでプルトニウムを奪うアクションシーンは見ごたえがあったし、虐げられ続けたヒロインが敵である夫と対峙する終盤のシーンは爽快感があった。主人公と相棒の絆も熱かった。完全に理解できなくてもそれでもちゃんと楽しめるようになっているのはすごい。難解すぎると観客がさじを投げてしまわないような演出となっている。
そして再度見直してみると、たくさんの見落としていた部分があったことに気付く。その発見がまた楽しい。見れば見るほど物語に対する理解が深まっていく。複雑でよく分からなくても見直す意欲が湧いてこない映画もあるが、これは何度でも見られそうな魅力がある。きっとちゃんとストーリが練られており、しっかりとポイントを押さえた演出がされているからだろう。この映画について考察するサイトがたくさんあるのも理解できる。
見終わった後に夢中でそんなサイトの図解を交えた記事を読んで回ったり、映画を見なおしたりしているうちに一日が過ぎてしまった。いつまでもあとを引く映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作
出演 ジョン・デヴィッド・ワシントン/ロバート・パティンソン/エリザベス・デビッキ/ディンプル・カパディア/マイケル・ケイン/ケネス・ブラナー/ヒメーシュ・パテル/クレマンス・ポエジー/アーロン・テイラー=ジョンソン/マーティン・ドノヴァン/フィオナ・ドゥーリフ