★★★★☆
あらすじ
舞台は南北戦争中の南部・バージニア州の女学校。生徒5人と教師2人の女たちだけで暮らす集団は、ある日森で見つけた北軍の負傷兵を保護し、しばらく療養させることにする。
感想
女だけで暮らしていた集団に一人の男がやってきたことにより生じるドラマだ。女たちが建前上は宗教的な良心に従っただけ、と取り繕いながらも、その実、男に興味津々で浮足立っているのが丸わかりなのが面白かった。そして互いにけん制しつつ、それぞれが好奇心を満たそうと男に近づいている。
しかし彼女たちが互いのことを、男を意識しているからいつもと違う、と指摘し合っているのは感心してしまった。何か大げさに変わったわけではなく、ただ普段しないブローチを付けていたとか、いつもより念入りに髪型をセットしているとか、そんな些細な違いに気付いている。女たちは、普段からそんな細かい部分までじっくりと相手のことを観察しているのかと思うと怖くなった。
とはいえこれは女だからということではなく、いつも同じメンバーで変わりばえのしない毎日を過ごしていれば、誰だってそうなってしまうだけのことなのかもしれない。
そんな女たちにチヤホヤされながら療養生活を送る兵士。羨ましく感じてしまうが、実際はかなり大変そうだ。女たちから寄せられる好意を、他の女たちを傷つけることなく捌いていかなければならない。しくじれば追い出され、戦場に戻るか捕虜になるか、どちらにしても命を危険に晒すことになる。
天国のように見えて実はクモの巣に囚われた蝶でしかない男は、ついに過ちを犯してしまう。そしてラストで恐ろしい仕打ちが下される。それまで互いに出し抜こうと競い合っていた女たちが、男に見切りをつけた途端、一瞬で手のひらを返して団結したのが怖かった。無意識にではあるが、皆で男を弄び、使えなくなったらあっさりと切り捨ててしまった。
酷いようであるが、これはこれで女たちの生きる知恵なのかもしれない。おそらく何年かすれば、この出来事を良い思い出の一つとして思い出すのだろう。女たちのたくましさを見せつけられる映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ソフィア・コッポラ
原作 The Beguiled (Penguin Classics) (English Edition)
出演
ニコール・キッドマン/キルスティン・ダンスト/エル・ファニング/ウーナ・ローレンス/アンガーリー・ライス/アディソン・リッケ
音楽 フェニックス
The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ - Wikipedia
関連する作品
同じ原作の作品