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「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」 2023

鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

★★★☆☆

 

あらすじ

 政財界に大きな影響力を持つ男が死去し、山奥での葬儀に駆け付けた取引先の会社員は、その村の暗部を目撃することになる。

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 劇場版「ゲゲゲの鬼太郎」シリーズ第11作目。104分。

 

感想

 有力者一族が支配する山奥の村を訪れた主人公が、村の秘密を知るようになっていく物語だ。前半には跡継ぎ争いに関係ありそうな不可解な連続殺人事件も起きて、どこか「犬神家の一族」や「八つ墓村」を思わせるような内容となっている。

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 ただあちらはおどろおどろしいのは雰囲気だけで実際は人の手による事件だったが、こちらは実際におどろおどろしい出来事が起きるところが違う。妖怪が出てくる物語なので当然だが。

 

 そんな村に目玉のおやじになる前の鬼太郎の父親もやって来て、主人公と共に行動するようになる。この父親は妻を探すために村を訪れたのだが、どこかのん気な調子で切実感はなく、最初はそんなに深刻な話だとは気づかなかった。

 

 また、当然強いです、みたいな雰囲気を醸し出しながら妖怪と戦い始めるのに、普通に弱くてあっさりとやられてしまうのもなんだか拍子抜けだった。どうにも掴みづらいキャラクターだ。そういうキャラだと言われれば仕方がないが、彼の言動にどうリアクションするべきなのか戸惑ってしまうところはあった。

 

 

 昭和31年の話で、戦争体験者である主人公が戦地で目の当たりにしてきた日本のクソさ加減に対する憤りが、各所で垣間見られるのが印象的だ。また、一部の人間が権力を握って大勢から搾取し、若者から力を奪っていつまでものさばり、協力すれば甘い汁を吸わせ、逆に拒絶すれば叩き潰してしまう日本社会に対する批判のように感じるシーンもたくさん見られた。

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 まるで民主主義に目覚め、戦争の悲惨さを訴える戦後の映画のような雰囲気がプンプンとしているが、そんな映画が現代に作られ、ヒットした意味を色々と考えてしまう。時代設定や原作者の戦争体験を考えれば当然なのかもしれないが、一応平和な日本で今、普通ならここまで色濃く描く必要はないだろう。ストーリーも原作者によるものではなくてオリジナルで考えられたもののようだが、脚本家や監督らは思い入れが強くなるだろう戦争体験者というわけでもない。

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 そんなことを考えていたら、もしかして今、戦後なのか?戦争してないけど日本は今、焼け野原なのか?と思い至った。確かに、戦争していたからそんな暇はなかったとでもいうように経済は全く成長してないし、なぜか公的な統計記録が残っていないものもあったりする。未来の人たちが見たら、この時期は戦時中で混乱した時代だったのだろうと見なすかもしれない。

 

 誰に焼け

野原にされ、何に負けたのかを考えることは興味深いが、もしそうならさっさと敗戦を認めて復興に努めたいものだ。いつまでも過去にこだわり、過ちを認めず皆の脚を引っ張る死んだ当主のような人間がのさばる時代はとっとと終わらせたい。そんな気持ちになってしまうある意味で戦後映画と言えそうな映画だ。

 

 このタイプの映画は今後増えていくのかもしれない。そして戦前・戦中映画みたいな映画が作られる世の中が来ないことを祈りたい。

 

スタッフ/キャスト

監督 古賀豪

 

原作    水木しげる

 

出演 関俊彦/木内秀信/種﨑敦美/小林由美子/古川登志夫/沢城みゆき/庄司宇芽香/野沢雅子

 

音楽 川井憲次

 

鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 - Wikipedia

 

 

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