★★★★☆
あらすじ
ナショナリストを気取って渋谷の街で暴れていた若者三人組は、右翼系暴力団の会長らに気に入られる。
感想
セリフが聞き取りづらく、映像表現にも気合が入り過ぎで、特に序盤は状況が良く飲み込めなかった。最初は確かにイラっとしたのだが、時間の経過とともに徐々に映像に気負いがなくなってくると、このザワザワとした雰囲気も悪くないかもと思えてくる。
全編にヒップホップ系の日本のアンダーグラウンドな楽曲が使われているが、それも映画にマッチしていてなかなかいい。昔は日本のこっち系のラップはきついかなと思っていたが、案外とイケるのだなと認識を改めた。
それとはまた別に、右翼がヒップホップ?とならなくもないのだが、そこらへんは時代に合わせて臨機応変に、と言うことなのだろう。でないと演歌だが軍歌だか、はたまた浪曲だかかは知らないが、とにかく古臭い音楽を聴かないといけなくなる。それにラップは、保守的な内容のものが割と主流だったりする。
それからナショナリストを気取る主人公の口からアメリカを批判する言葉が出てきて、そういえば右翼って反米だったなと久々に思い出した。ネットで見かける右翼の人たちからはあまりそういう言葉を聞かないので忘れていた。なんなら彼らは米軍基地に反対する人たちを批判したりさえしているのでよく分からない。
ちなみに保守には親米派と反米派がいるらしいが、親米派は米軍が日本で好き勝手にやっている事まで許しているのだろうか。国防のためには仕方がないとか言いそうだが、例えば契約している警備会社の人間が自由に自宅に出入りし、勝手に飲み食いしたりテレビを見たりとやりたい放題で、さらにはたまに家族を襲ったりしても、セキュリティのためには仕方がないとあきらめ顔で言うのだろうか。
そんなよく分からない右翼の、しかもガチな人たちの日常が見られるのかと思ったのだがそんなことはなく、暴力団同士の抗争に巻き込まれていく主人公たちを描いた少し毛並みの変わったヤクザ映画みたいなものに仕上がっている。無邪気にイデオロギーを主張する主人公ら若者たちが、老獪な大人たちに利用され飲み込まれていく。
構想や陰謀の描き方が甘くて構図が分かりにくいのだが、主演の窪塚洋介の魅力がすべてを引っ張っていく映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/編集 薗田賢次
脚本 丸山昇一
原作 凶気の桜
出演 窪塚洋介/RIKIYA/須藤元気/高橋マリ子/本田博太郎/江口洋介/成瀬正孝/峰岸徹/菅田俊/麿赤兒/速水典子
音楽 K DUB SHINE(キングギドラ)