★★★★☆
あらすじ
山中のホテルの冬季閉鎖期間中の管理人を引き受け、家族と共にやってきた男は、次第に心を病んでいく。
感想
序盤のこれから何か不吉なことが起きそうな予感を高めていく演出が見事だ。子どもの不気味な振る舞いや、三輪車のタイヤの音やボールが弾む音など、どこか心を落ち着かない気分にさせる効果音など、映画のあちこちに不穏さが満ちていて、どんどんと不安な気持ちが高まっていく。
中でも花柄の壁紙や幾何学模様のカーペットなどのちょっとうるさいインテリアが、妙に心をざわつかせた。情報量の多さが勝手に想像力をたくましくして、見えないものが見えてしまう幻覚のように、嫌な予感を増幅させるのかもしれない。おそらくこれは意図的にやっているはずで、惨劇が始まった後はシンプルなインテリアしか映し出されなくなった。
誰もいない雪山の大きなホテルで、家族だけで暮らすことになった男が狂っていく物語。冬の間の数か月で徐々におかしくなっていくのかなと思っていたが、最初の1か月で直ぐにおかしくなってしまって案外と早かった。ただその過程をじっくり描こうとすると6時間くらいの映画になってしまいそうなので仕方がない。
それから、様々な思わせぶりな描写がありながらも、実は男がどうして狂っってしまったのか、その原因ははっきりとは分からず、ボヤけたままだ。単純に個人の気質によるものから、過去に起きた事件の霊が引き起こしたものまで、様々な要因が考えられる。うまく整理されていないとも言えるが、いくらでも解釈の余地があるともいえる。その懐の深さがまた想像力を掻き立てて、映画を魅力的なものにしているのだろう。そう考えると、彼がひと月でおかしくなってしまうのも、何か意味があるように思えてくる。
終盤は、正気を失ったかのようなジャック・ニコルソンの鬼気迫る演技に魅せられる。彼は本当に自分の活かし方をよく理解している。そして、その陰に隠れがちだが、彼に追われる息子と妻の二人も実は良い演技を見せている。これらが相乗効果となって映画はめちゃくちゃ盛り上がっていく。ラストの主人公の最期も最高だった。
そして意味深な写真で終わるエンディング。主人公はその生まれ変わりなのか、似ているから過去の亡霊たちが勘違いして近づいてきてしまったのか、これもまた様々な解釈ができる演出だ。合理的でなかったり、現実的でないように思える出来事も多いが、超常的な事が起きても不思議でない空気が醸成されているので全然気にならず、それも含めて楽しめる映画だった。また、映画全体を通してこだわりが感じられる構図の映像が続くので、怖いだけでなく、どこか心地よさもあった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作
原作
出演
シェリー・デュヴァル/スキャットマン・クローザース/ダニー・ロイド/バリー・ネルソン/フィリップ・ストーン/ジョー・ターケル
音楽 バルトーク・ベーラ/クシシュトフ・ペンデレツキ/リゲティ・ジェルジュ/ウェンディ・カルロス/アル・ボウリー
撮影 ジョン・オルコット
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