内容
芥川賞受賞作。タイトルの読みは「ちちとらん」。
感想
関西弁で一文が長いこの文体は、どうしても町田康を思い浮かべてしまうのだが、もちろん受ける印象は違う。町田康はどこか自分で自分を笑うような、独り相撲をする感があるが、川上未映子はどこか自分に対しても冷めてるような印象を受ける。こういう頭の中をめぐる思考を文章化したような、長い文章はくせになって読んでいると気持ちよくなってくる。
芥川賞受賞の表題作は、タイトルを聞いただけでは何の事だかさっぱり分からなかったが、読んでみればそういうことかと納得。女性の世界の話で興味深く読ませてもらった。あまりこうがっつりと、こういう内容の話を書いた文章というのはなかったような気がする。
女に限らず実際自分のことなのに、良く考えれば不思議で不気味にさえ思うことはある。さっきまで自分の一部だった爪も切ってしまえばそれはもう自分ではなく、どこかの焼却炉で燃やされても何とも思っていない事とか、自分の内臓見たらきっと気持ち悪いと思ってしまうだろう事とか、じゃあ切り離されたら自分じゃなくなる自分や、見ても気持ち悪いとならない自分というのは、一体全体自分のどこに居るんだ、とか。考えれば考えるほどわけが分からなくなる。
著者
川上未映子