関西弁で一文が長いこの文体はどうしても町田康を思い浮かべてしまうのだけども、もちろん受ける印象は違う。町田康はどこか自分で自分を笑うような独り相撲の感があるが、川上未映子はどこか自分に対しても冷めてるような印象を受ける。こういう頭の中をめぐる思考を文章化したような、長い文章はくせになって読んでいると気持ちよくなってくる。
芥川賞受賞の表題作、タイトル聞いただけでは何の事だかさっぱり分からなかったが、読んでみればそういうことかと納得。女性の世界の話で興味深く読ませてもらった。あんまりこうがっつりとこういう内容の話を書いた文章ってなかったような気がする。
女に限らず実際自分のことなのに、良く考えれば不思議で不気味にさえ思うことってある。さっきまで自分の一部だった爪も切ってしまえばそれはもう自分ではなく、どこかの焼却炉で燃やされても何ともない事とか、自分の内臓見たらきっと気持ちわるって思ってしまうことだろうとか、じゃあ切り離されたら自分じゃなくなる自分や、見ても気持ちわるってならない自分というのは、一体全体自分のどこに居るんだ、とか。考えれば考えるほどわけが分からなくなる。
著者 川上未映子