★★★★☆
内容
ボブ・ディランに関するドキュメンタリー映画。
感想
ボブ・ディランはもはや生きる伝説で、若くして死なずまだ現役で、それでも伝説的存在であるっていうのは本当にすごいことだ。伝説的な人間と言うのはたいてい全盛期に悲劇的な死でこの世を去っているし、全盛期を過ぎた人間は大抵、かつて人々の注目を浴びた人と言う認識をされるだけなのに。
そういうこともあって言葉が次から次へと溢れ出て、とどまることなく曲を作っていられるような超人的な人を想像してしまうが、この映画を見ているとそうではないんだということがよく分かる。彼の若い頃のエピソードには、彼の努力する様子が窺い知れる。
古い昔のレコードを聞き込んだり、他のミュージシャンの演奏から学んだり。彼もやはり努力していたのだと言うことがよく分かる。もちろん才能もあるがそれだけではないということが。他人の家から400枚レコードを勝手に持ち去ったと言うエピソードは面白い。きっとこそこそせずに何食わぬ顔で持ち去ったのだろう。
この映画から分かる彼のもう一つの特徴は、孤高の精神だ。悪く言えば天邪鬼でみんなの思うようにはなりたくないと言う性格が見て取れる。みんなの期待する自分ではなく、自身の望む自分の姿でいようとする。フォークの神様と崇められようとエレキギターを手にしたければするし、反戦の旗手と持ち上げられそうになっても首をひねる。決して声高に自分はそうじゃないんだと訴えるわけでもないし、自分を見失って世間に反抗しているわけでもない。ただ、淡々と静かにその姿を変えていく。
フォークソングを期待する観客の前にバンドを従え登場し、不敵な表情を浮かべエレキギターを弾くディランの姿がとても印象的だった。
スタッフ/キャスト
監督 マーティン・スコセッシ
出演
マーティン・スコセッシ/ジョーン・バエズ/リアム・クランシー/ジョン・コーエン