★★★★☆
あらすじ
妻に先立たれ、息子たちともうまくやれない頑固で孤独な男が、ふとしたきっかけで隣人のアジア人一家と交流を持つようになる。
感想
クリント・イーストウッドは年老いても男らしい。昔からのイメージのままだ。でも本当にただの老人という役をやったらどうなるのだろうか、興味はある。でももう、クリント・イーストウッドは何をやっても、まずクリント・イーストウッドという役をやることになってしまっているが。
とある地方都市。貧しい地区に過ごす黒人とアジア人の若者たちは、互いにチームを作り争っている。こういう貧しい者同士で争って勝った、負けたで一喜一憂しているのは、金持ちの思うつぼで馬鹿らしいなと思ってしまう。本当に悪いのは富を独占している人たちのはずなのに、同じ立場の人間同士で不満のはけ口にして戦っている。だけどこれが現実だ。
そんなアジア人と黒人の抗争やその仲間内での争いに、クリント・イーストウッド演じる主人公は、元来の男らしさのせいで口を挟み、巻き込まれていく。手で拳銃の形をして若者たちを脅すシーンは、クリント・イーストウッドだから成立するものだろう。彼はこれがきっかけで隣人のアジア人一家と交流するようになり、彼の頑固一徹な性格にも変化が見え始める。
他の登場人物たちもなかなか個性があっていい。特に主人公と散髪屋のやり取りは面白い。互いに罵り合うことで絆を確かめている。そして、主人公を気に掛ける若い神父。彼はただ小バカにされるだけの存在かと思っていたが、なかなか重要な役割を果たしている。
自らが関わったことで悲劇を招いてしまい、それにどうけりをつけるのか。こういった重いテーマの作品が最近のクリント・イーストウッド監督作品には多いような気がするのだが、彼自身何か思うところがあるのだろうか。この作品では、他の罪のない誰もが重荷を背負う事のないように、自らを犠牲にして決着をつけるというカッコ良すぎる、だけど彼らしい結末だった。
スタッフ/キャスト
監督/製作/出演
製作 ビル・ガーバー/ロバート・ロレンツ
出演
ビー・バン/アーニー・ハー/クリストファー・カーリー/ブライアン・ヘイリー/ ドリーマ・ウォーカー/ジョン・キャロル・リンチ/スコット・リーヴス
音楽 カイル・イーストウッド/マイケル・スティーヴンス