★★★★☆
あらすじ
かつてのロデオ・チャンピオンで今は自堕落な生活を送る老人は、恩人にメキシコの元妻の所にいる息子を連れ戻すよう頼まれる。104分。
感想
序盤は緩慢な動きや覇気の無い声など、主演のクリント・イーストウッドの衰えぶりばかりが気になってしまった。とはいえ、90歳を超えて監督・主演をしているのだから意味が分からないくらいすごいのだが。
彼は100歳を越えてもがっしりとしたままでいるものだと思っていたが、いくら彼でもさすがにそういうわけにもいかないのかと少し寂しくなった。人間は誰しも年老いる。
恩人に息子を連れ戻して欲しいと頼まれ、主人公はメキシコへ向かう。途中、車を降り荒野に寝っ転がって野宿をするシーンは、なんでそんなことをするのかと不思議だったが、彼の中では車で眠るよりも大自然の中で眠る方が贅沢なことだということらしい。それだけで彼が往年の本物のカウボーイであることが伝わってくる。
だが主人公は、タフなカウボーイらしからぬ姿も見せる。喧嘩があってもやり過ごし、女に誘われても拒む。年齢的なこともあるのだろうが、そこは行かないのかと意外だった。また終盤に警察に絡まれた時、主人公があからさまに歯向かうのではなく、ずっとぶつぶつと悪態をついていたのも面白かった。
なんとか少年を見つけ帰路に着く主人公だったが、様々なトラブルの結果、メキシコのとある町で長逗留を余儀なくされる。ここで主人公と悩みを抱える少年が心の交流をはかり、また知り合った地元の女性の一家とも関係を深めていく。よくある展開ではあるが、心がほっこりと温まる。
終盤、主人公と少年に別れの時がやってくる。ここでマッチョに憧れる少年に、マッチョなんて憧れるものではないと語る主人公が印象的だ。今まで散々マッチョな役柄を演じてきたクリント・イーストウッドの悔恨の言葉だけにずしりと心に響く。
そして年老いて、もはや自分はマッチョではないと素直に認める彼の姿には感慨深いものがあった。タフな男らしくないように見えた中盤の振る舞いもこれで納得だ。
そのままスッとエンディングを迎えても良さそうなところで、ちょっとしたアクションシーンとなる。マッチョを体現しようなんて馬鹿げているし、もはやそんな時代でもないが、その精神は心に持っていたいと言っているかのようだった。深い余韻が残る映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/製作/出演
原作 「クライ・マッチョ」 N・リチャード・ナッシュ
出演 エドゥアルド・ミネット/ナタリア・トラヴェン/ドワイト・ヨアカム