★★★★☆
あらすじ
弟分を助けるために、何の恨みもない敵対する組の親分を殺してしまった男が、刑期を終えて戻ってくる。
感想
今観てみるとこの頃のヤクザ映画はほとんど時代劇だ。戦う前はちゃんと名乗りを上げるし、乱闘シーンはチャンバラだし、作法も儀式的だ。物語も、最初は周りの人間たちの気が立って、物騒な雰囲気になっていても主人公はおとなしくしているが、ついには我慢ならなくなって敵に切り込んでいく。まるでテレビの時代劇のような展開だ。でも娯楽映画としては正しいような気がする。
最初は敵がやりたい放題で、見ている側はフラストレーションがたまる。そのフラストレーションが十分溜まったところで、主役が圧倒的な強さで敵を倒していく。単純だとは思うが、やっぱり見ていて気持ちがいい。高倉健が上半身をはだけて背中の入れ墨を露わにした時なんて「待ってました」という気分になる。
そのフラストレーションを発散させる前には、義理だの仁義だの短い言葉で大義名分を語らせ、雪の中を歩いていくシーンでちゃんとクライマックスへの気分も盛り上げてくれる。うまく観客の気持ちをコントロールしている。
これで女にもてたら客は醒めるが、主人公は自分の気持ちを打ち明ける事さえせずに無言で去っていく。きっと客も男はこうでなくちゃと満足して映画館を後にするのだろう。しかし、日本のカッコいい男性像というのは結構しんどい。喧嘩は強くなくちゃいけないし、優しくなくてはいけないし、女性に対しては潔癖でなくてはいけない。かなり忍耐が必要だ。
スタッフ/キャスト
監督 佐伯清
出演
三田佳子/池部良/芦田伸介/花沢徳衛/保積ペペ/赤木春恵/織本順吉/室田日出男/八名信夫/岡崎二朗/菅原謙二/水島道太郎
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