BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「「渋滞」の先頭は何をしているのか? 」 2009

 

「渋滞」の先頭は何をしているのか? (宝島社新書 291)

★★★★☆

 

内容

 渋滞のメカニズムを紹介し、車だけに留まらない世の中に生じている渋滞を解説する。

 

感想

 以前読んだこの著者の「シゴトの渋滞学」よりは、いわゆる車の渋滞について詳しく説明されていて面白かった。

bookcites.hatenadiary.com

 

 結局、自然渋滞は、皆が利己的な運転をしている限り無くならないということがよく分かる。でも、多くの人はどんなに渋滞があっても、自分だけはそれをうまくすり抜けたいと思っているから駄目になる。

 

 この本の中では、全員じゃなくても、何人かが渋滞を解消するための運転をするだけで、渋滞は大きくならないことを説明している。だが、そんな運転をする者が目的地に到着する時間は結局変わらないという事も説明していて悩ましい。皆が利他的な運転をすれば皆が幸せになれるが、そうでない場合は、利己的な人間が得をするという事だ。誰かが利他的な運転をしてくれれば、自分は好き勝手な運転をしてもその恩恵に預かれてしまう。このあたりが難しい問題だ。結局人間を扱うのが一番手を焼く。

 

 

 この本の中では車の渋滞だけでなく、経済や病気などの渋滞についても範囲を広げて解説されていく。確かに渋滞の理論を他の分野に当てはめてみると様々な事が分かったり解決したりすることもあって有用なんだろうという気はするのだが、今現在でも世界中で渋滞は起きているわけで、それを解決する事に力を注いでほしいなと思ってしまう。

 

 高速道路というある意味単純化された道路だけでなく、信号だの歩行者だの交差点だのある複雑な要素が絡む一般道での渋滞についても詳しく知りたかった。例えば道路を増やすのではなく、敢えてある道路を1本閉鎖することで渋滞が減るとか、信号のタイミングを変えるだけで流れがスムーズになるとかありそうだ。突き詰めていくと都市計画論とかになってしまいそうだが。こういう道路が多い街は無駄に渋滞が起きやすいとか分かると、引っ越しの時とか参考にできていいのに。

 

著者

西成活裕

 

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com