★★★☆☆
内容
「やさしさ」という技術を身につけることによる効用を説く。
感想
うーん、あまりピンとこなかった。人に優しくしなさい、とはよく言われることで、みんな多かれ少なかれそうあるべきだと思っていることで。優しくすることで回り回って自分にも返ってくるという「情けは人のためならず」というのも理解できる。
問題は自分の優しさがなかなか回り回って自分に返ってこないこと。みんな誰かに優しくしたことはあるけれど、時にはその優しさを当然と受け取られたり、逆に利用された苦い経験があるわけで、そんなことが積み重なって人に優しく出来ない人間が出来上がる。でもこの本では、そんなときでも自分への試練と受け止めて、優しくできる自分になりなさい、と説く。こうなってくるとほぼ宗教が説いていることと同じ。しかもその宗教は異教徒には優しくないし。
これを読んだからといって、すぐに何かが変わるという即効性のあるものは何もない。ただただ地道に積み重ねていくことが必要。これを読んで何かが変わると期待する人にとっては肩透かしになるかもしれない。ただ、他人だけに優しくするのではなく、自分にも優しくする必要がある、とか、利己的な動機で優しくする事にやましい気持ちを持つ必要はない、とか、重要なのは気持ちではなく、行動である、とか、なるほどなと思わせてくれる部分もある。
そして、この本が著者の母国であるスウェーデンでベストセラーになったということがなかなか興味をそそられる。この本を手に取る人はやさしくありたい、と思っている人で、その考えを強化・補完したいから読むはずで、間違っても人の良心に付け込んで何かをだまし取ろうとか考えている人ではないはずだ。だから、スウェーデンの人は優しい人が多いのだろう。
著者
ステファン・アインホルン
登場する作品