★★★☆☆
内容
知覚が起こす錯覚、人が理性的に振舞っているようで実はそうでないことが分かる実験の結果や事例を紹介する。
感想
選挙は候補者の顔でほぼ決まるとか、空腹や疲れを感じていると人に対して厳しくなるとか、なかなか興味深い話が出てくる。
中でも興味深かったのはアンカリングの話。スーパーのセールなどでよくある特売価格の「お一人様3個まで」や「お一人様5個まで」という制限は、実はアンカリングで客は制限数ギリギリまで購入しがちになるという。 つまり3個までというよりも5個まで、といったほうが売上が伸びる。
誰かが買い占めると不満が出るから数量限定しているのだろうと思っていたが、そういう効果もあるという。確かにそれが安いと思ったら、限定数ぎりぎりまで買おうとしてしまう。面白い。
ちょっとショックだったデータは、安い車より高級車のドライバーの方が運転のモラルが低い、ということ。理由を聞くとわからないでもないが、なんかショックだ。金持ちは余裕があって欲しい。実際、せこい運転する高級車を見かけるとがっかりする。海外の実験なので、もしかしたら日本でやったら違う結果が出るのかもしれないが。
いろいろ面白く興味深かったのだがタイトルに不満。実験手法の詳細は詳しいが、脳がなぜ騙すかについてはあまり書かれていない。あとがきで著者は心理学の実験手法の面白さを知ってもらうことが最大の目的、と言っちゃってるし。そうならこのタイトルは誠実さに欠ける。新書のタイトルは著者でなく、編集者が決めることがあるようなので、もしかしたら著者がつけたタイトルではないのかもしれないが。それにしても。
著者
妹尾武治