★★★☆☆
内容
渋滞学の観点から仕事を考える。
感想
昔爆笑問題の番組でやっていた「渋滞学」の話が面白かったので読んでみた。「渋滞」の話を詳しく知りたかったのだが、この本にはそんなに詳しくは書かれていなかった。タイトルからしてその趣旨とは違うので、それを責めるのはお門違いではあるが。
渋滞学と絡めて仕事術を説いていて、実際に現場に応用したりしているみたいなので確かに説得力があるような話もあるが、野球好きなおっさんが何でも野球に例えて仕事を語るような、そんな所もある。全員が4番でエースじゃダメでバントをする人間も必要だ、みたいな。それに単に自分の個人的な体験を基にしただけの話もあり、渋滞学の宣伝をしているだけと感じるような面もあって、全体的にモヤモヤしたものが残る。著者自身が、一つの考え方を提供するのが目的と言っているので、その点ではまぁ納得できる。
でも渋滞というのは、みんなが40メートルの車間距離を空けるだけでかなり解消されるというのも面白い話だ。そうならみんながそうすればいいのに、必ずその空けた車間距離を狙って車線変更してくる人間がいるからなかなかそうはならない。一人だけ得をしようとする人間がいるから、一向に世の中から渋滞がなくならない。まるで囚人のジレンマだ。誰よりも早く目的地に着こうとするのではなく、皆で協力しましょうというのは、分かっていてもなかなか難しい。
だがわずか8台で渋滞が緩和できるのなら、それを仕事にしているトラック輸送業者とか業界が団結してそれをやればいいのに。これなら互いの利害が一致するはずなのだが。
とはいえ皆が協力すれば最適の結果が得られるという渋滞学の真理はなかなか仕事の場で生かせないのではないのだろうか。資本主義社会の企業は利潤の追及が目的なのだから。日本で金型を共通化して国際競争力を高めたところで、じゃあ世界ではなんで戦うのということになる。世界で金型を共通化すれば、という話にいずれなってしまう。
中途半端な感じの本だったのでがっつりと「渋滞学」について書かれた本を読みたくなった。
著者
西成活裕