★★★★☆
あらすじ
長年仕えた主人が亡くなり、新たな主人を迎えた執事が人手不足を解消するため、かつての女中頭に会いに行く。
感想
執事って職業がいまいちピンと来ない。当然奴隷ではないが、主人の要求に従わなければならない。しかも言葉遣いも気品があって、教養もなければならない。こんな職業につきたいと思う人はいるのかなと不思議な気分になる。だが実際は自由時間もありそうだし、休みも取れるし、そこまで待遇は悪くなさそうだ。
アンソニー・ホプキンスの執事役が見事だ。年老いた父親や女中頭との関係などに心を悩ましながらも、自分の務めを果たすことを第一に考えている。だが心の中を隠しきれず、小さな動揺が時々表情や行動に表れる。その姿が観ている側の心を揺さぶる。
結果的に第2次世界大戦の勃発に加担してしまった理想主義の主人に対する世間の評判を知りつつ、そんな主人に忠誠を尽くした誇りを失いたくない執事の戸惑っている様子が痛々しい。だが善意だからと自分の行動に疑いを持たない人たちは、本当に他人に迷惑をかける。客が執事を呼び止めて質問し、彼の無知をあざ笑うシーンなんて、彼らは何の罪悪感も感じていないのだろう。バカな民衆のために頭の良い俺たちが社会を良くしてやろうという傲慢な善意が彼らに満ちている。
女中頭との再会にも自分の思っていたような結果を得ることが出来ず、自分の気持ちを伝えることも抑えて、屋敷に戻った執事。自分の心を揺さぶって去っていった人たちに思いを馳せながらも、自らの仕事を続けていく。こういう生き方もあるのだなと考えさせられる。
スタッフ/キャスト
監督 ジェームズ・アイヴォリー
脚本 ルース・プラワー・ジャブバーラ/*ハロルド・ピンター
*クレジットなし
製作 マイク・ニコルズ/ジョン・キャリー/イスマイール・マーチャント
出演
ジェイムズ・フォックス/クリストファー・リーヴ/ピーター・ヴォーン/マイケル・ロンズデール
登場する人物
ネヴィル・チェンバレン