★★★★☆
あらすじ
アメリカ南部の農園で生まれ、やがてホワイトハウスの執事となり、歴代大統領に仕えた男。
感想
農園で働く黒人の息子として生まれ、目の前で父親が殺された主人公。いつか自分も殺されると恐れて農園を脱出する。なんとかありついた給仕の仕事に精進し、ついには大統領の執事にスカウトされるまでになる。そしてそこで歴代大統領の公民権運動に対する反応を眺めることになる。
なんとなく自分の中では、アメリカの公民権運動は歴史の中の出来事のような気がしてしまっていたが、映画の主人公のように南部で奴隷的扱いを経験をした人たちがまだ存命で、つい最近の話なんだなと実感させられた。そしてそれはつまり、もう一方の差別をすることが普通だった人たちもまだたくさんいたという事でもある。そんな彼らが黒人の大統領の誕生を見るなんて、信じられないような思いだっただろう。
そんな差別が色濃く残る時代を、大統領の執事として過ごした主人公。黒人としては成功した人生ではあるが、盛り上がる公民権運動には複雑な感情を持っている。この人種的衝突が、白人とうまくやっている自分の仕事が脅かされる可能性もあるし、同胞の黒人からも批判されたりもする。この辺りの戸惑いを、息子を活動家にすることでうまく表現している。
だが当然、主人公にも言い分がある。差別のある世界で生き抜かなければならなかったし、白人のそばで立派に仕事をこなすことで彼らの偏見を拭い去ることも出来た。歴代大統領の政策にも、身近な彼らの存在が影響を与えている。第一、息子が公民運動の活動家になったのは、主人公が高い教育を与えたからだ。
主演のフォレスト・ウィテカーの青年から老年まで演じ分けが見事だった。歴代大統領を演じるロビン・ウィリアムズやジョン・キューザック、アラン・リックマンらの熱演を見ているだけで面白いし、マライア・キャリーやレニー・クラヴィッツといったミュージシャンたちが意外なちょい役で出ているのも微笑ましい。
主人公と息子との和解や、老年になっても妻との仲睦まじい様子など、なかなか感動的なシーンもある。ただ、一人の人生としてみても、家族の物語としてみても、アメリカの公民権運動の歴史としても、歴代大統領の物語としてみても、どれも描き方がピンポイントで中途半端な印象も受けた。面白く見ることはできたのだが、どこか消化不良な気分も残った。
スタッフ/キャスト
監督/製作 リー・ダニエルズ
原作 大統領の執事の涙
出演 フォレスト・ウィテカー/オプラ・ウィンフリー/ デヴィッド・オイェロウォ/ イライジャ・ケリー/デヴィッド・バナー/マライア・キャリー/テレンス・ハワード/ヤヤ・ダコスタ/ アレックス・ペティファー/ ヴァネッサ・レッドグレイヴ/クラレンス・ウィリアムズ3世/キューバ・グッディング・ジュニア/レニー・クラヴィッツ/ロビン・ウィリアムズ/ジェームズ・マースデン/ミンカ・ケリー/リーヴ・シュレイバー/ジョン・キューザック/アラン・リックマン/ジェーン・フォンダ