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「桜の園・三人姉妹」 2011

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ/感想

桜の園

あらすじ

 裕福な暮らしを続けるも借金を重ね、名所「桜の園」のある土地を売りに出している女主人とその一家。

 

感想

 女主人の家は、昔からの裕福な名家なので、金持ちならではの英才教育を受けていても良さそうに思えるが、全くそんな様子がない。金がないのに頼まれるとすぐにお金をあげたり、なぜか盛大なパーティを開いたりしていて、全く金に無頓着。少し笑ってしまう。

 

 本当に何もしないでも裕福でいられたのが、時代の変遷によりそれが難しくなってきたという事なのかもしれない。お金の維持の仕方は分からないが、使い方だけは知っているという印象で、きっと当時のこんな金持ちたちは、ずる賢い人間たちの良いカモになっていたのだろうな、と思ってしまった。

 

 

 「桜の園」を失わないでも済む方法を親切な商人が必死に説明しているのに、女主人たちがまったく聞く耳を持たないのは意味が分からなさ過ぎてゾッとした。自分が理解できないことはすべてシャットダウンして、現実逃避をしている。

 

 女主人たちが全然現状を理解せず問題を放置する様子は、まさに没落していく名家の惨状と言ったところで哀愁が漂っている。ただ、その娘は新しい時代を生きるのだという希望を抱いていて、ただの寂しい物語ではなく、新しい時代、新しい世代の台頭というような、新しい何かが始まる物語のようにも感じらる。

 

三人姉妹

あらすじ

 一家の長である長男と三人の姉妹が暮らす家。

 

感想

 長男が妻を迎え入れた事で変わっていく家。都会の教養のある人間だと自負する姉妹たちは最初、長男の妻になる田舎臭い女を馬鹿にしていたのだが、次第に立場を逆転され、家の中で居場所を失っていく。その変化を劇中ではなく幕間に表現するのが面白い。幕が開くごとに妻の立場が強くなっていっていく。

 

 しかし、最初はあんなにおどおどしていたのに、最終的には夫ですらも尻に敷き、完全に家を取り仕切るようになるなんて、女はすごいなと思わせられる。これは妻が子を産み、ギャンブルで借金を背負った夫の弱みを握ることで自分の居場所を着実に確保し、自信を増大していったという事もあるが、それとは逆に夫や三人姉妹たちが、自分のやっていることに迷いを感じて自信を失っていった事も大きいような気がする。

 

 三人姉妹にとっては切ないラストが待ち受けていたようにみえるが、それでも彼女たちが前向きなのが救いだ。少なくとも醜悪になっていく長男の妻よりも、今後の人生に希望があるように思える。「桜の園」同様、こちらもどこか前向きさを感じる結末になっている。

 

著者

チェーホフ

 

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

 

桜の園 - Wikipedia

三人姉妹 - Wikipedia

 

 

登場する作品

三人姉妹

乙女の祈り

 

 

この作品が登場する作品

桜の園

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