★★★★☆
エッセイ。誰も気にしないことに妙にこだわったり、一般的に良しとされている事に抗議してみたり、世間がどう思おうと俺はこう思うのだとあえて語っていくスタイルが面白い。大人はこういうこと言うと角が立つな、とか配慮してスルーするのだけど、あえて語る。子供っぽさでもあるのかもしれない。まぁでも言わないと伝わらないこともあるわけで。みんな自分を基準に物事を判断して、だいたい他の人間も同じように考えているだろうと思いがちだから。
新聞に連載されたエッセイも掲載されているのだが、ちょうど東日本の震災が起きた時期を挟んでいて何故かドキドキしてしまう。そんなことが起きるとは思っていなかった世界から、そんなことが起きてしまった世界へとその日を境に切り替わる。
なかでも震災当日の、町ですれ違う人々とよく目が合ったという記述が印象的。目を合わせ、互いの不安を分かち合うことで心を落ち着かせていた。言葉はないが助けあっていたと。きっと皆無意識にそんなことをしていたのだと思うが、それに気付く観察力がすごい。世の中には同じ景色を見ても何も発見しない人と色んな物を発見できる人がいる。
著者