★★★☆☆
あらすじ
売れない漫画家の男があてのない旅に出る。
感想
金も稼げず住む家もなく貧しくて、女も寝取られた男の、あきらめたような、冷めたような覇気のない姿勢。ただ流されるように生きている。ただ、他人を見る目は冷静で、客観的で落ち着いた観察を行っている。
そしてそこから妄想も膨らんでいく。現実なのか空想なのか判別できないような不思議な映像世界が展開される。正直内容は良くわからないのだが、それでも物語の世界に惹きつけられていく。
他者との関係や、自身の貧困、病気や怪我など、自分ではどうすることもできない出来事に対する底知れない不安が伝わってくる。怪我をしたことに対する不安に、それを治療してくれる人が見つからないことへの不安と、不安に対する不安が負のスパイラルで積み上げられていく。
最後に体に取り付けられた「ねじ」は、不安ばかりの社会で、何か一つでも自分でコントロールできるものが欲しいという、主人公の切実な願望が現れているのかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督 石井輝男
原作 ねじ式 (小学館文庫)
出演
藤谷美紀/藤森夕子/金山一彦/つぐみ/杉作J太郎/清川虹子