BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ハケンアニメ!」 2022

ハケンアニメ!

★★★☆☆

 

あらすじ

 憧れの天才監督の復帰作と同じ時間帯の連続アニメを任された新人監督は、冷徹なプロデューサと共に勝つために奮闘する。

www.youtube.com

 

 辻村深月の同名小説が原作。128分。

 

感想

 同時間帯に放送される天才監督のアニメに闘志を燃やす新人監督が主人公だ。彼女があまりに天才監督を敵視することに戸惑いを覚えてしまったが、ここで結果を出さないと次がない新人監督ゆえの気負いなのだろう。ただ、何から何まで全部勝ちたいと言ってる割には、プロモーションに消極的なのは解せなかった。

 

 アニメ制作の現場からプロモーションまで、アニメ番組制作に関わる様々な人々の様子が描かれていく。業界の内幕が見られて興味深いが、スタッフらが新人監督に文句を言ったり陰口を叩いたり、悪い裏話をしたりするなど、心臓がキュッとなるようなしんどい人間関係も垣間見える。

 

 

 そんな人間のドロドロした部分に主人公が消耗していく話になっていくのかと思っていたら、そういうところがありながらも結局みなアニメが大好きで、アニメ作りに情熱を燃やしていることが分かってくる展開で、胸が熱くなった。好きでなければやっていられない世界なのだろう。

 

 主人公はそんな世界で苦しみながらも成長していく。演じる吉岡里帆が色気のない役を色気を見せずに好演している。

 

 だが一方で、肝心のハケン争いはどうなった?というのはある。視聴者がSNSで盛り上がっているらしいことは伝わってくるのだが、主人公はじめ関係者たちは一喜一憂どころか、その話題に触れることすらほぼしない。さらには互いのアニメを見ている様子だってない。

 

 それからこの勝負の基準が視聴率らしいことにも釈然としないものがあった。確かに指標の一つではあるが、今さらそれ?となる。録画やネット配信もある中で今時リアルタイムで見る人なんて熱心なファンだけだろう。それに連続アニメだと、今週はこっちを見たけどつまらないから来週はあっちを見よう、とはならないので、視聴率のデッドヒートはイメージしにくい。視聴率が増えるとしたら、今までどちらのアニメも見ていなかった人が見るようになった時だけだ。

 

 さらに視聴率と言っておきながら、リアルタイムでスマホで見ている人は何なの?それはカウントされているの?等と気になってしまった。このあたりはフィクションなので、あまり気にしてはいけないのだろう。監督もこれらについては理解していて、苦慮していたようだ。

映画『ハケンアニメ!』吉野耕平監督インタビュー - TOKION

 

 結局視聴率は大事だがそれがすべてではなく、主人公も最初からそんなことは分かっていたから、良いアニメを作ることに全集中していた。それに勝ち負けでないことも分かっていて、誰かの心に刺されと祈りながら作っていた。それ自体はすごい納得が出来るものだが、だったら最初からハケンとか煽らなくていいのに、と思ってしまった。ハナからハケン争いなんかしていなかった。

 

スタッフ/キャスト

監督 吉野耕平

 

脚本 政池洋佑

 

原作 ハケンアニメ!

 

出演 吉岡里帆/中村倫也/柄本佑/尾野真千子/工藤阿須加/小野花梨/高野麻里佳/前野朋哉/矢柴俊博/新谷真弓/松角洋平/水間ロン/前原滉/みのすけ/古館寛治/徳井優/六角精児/伊藤さとり/(声)朴璐美

 

ハケンアニメ! (映画) - Wikipedia

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com