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「沈黙のパレード」 2022

沈黙のパレード

★☆☆☆☆

 

あらすじ

 歌手志望の若い女を殺害した容疑で逮捕されるも、完全黙秘を貫き釈放された男が、何者かによって殺される。

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 シリーズ第三作目。

 

感想

 失踪していた歌手志望の女性の遺体が見つかるも、容疑者が完全黙秘を通し、処分保留で釈放されてしまったことから物語が動き出す。当然、この容疑者の犯行を裏付けるための捜査が始まるのものかと思っていたのに、その後はなぜか主人公が祭り見物をする様子が延々と描かれる。本題とは全く関係のないこの時間は何?となってしまった。

 

 一応はその後の展開に関係してくる場面ではあったのだが、その時点ではこの祭りを見たくなるような動機がこちらには全くない。まさか主人公の知り合いたちの祭りの出し物は何だろう?と興味を持つとでも思ったのだろうか。海賊だったかー、てなるわけがない。

 

 この祭りの間に容疑者が何者かに殺され、主人公による捜査が始まる。だが早々に主人公が殺人のトリックを暴いてしまう。動機は人を殺したのに捕まりもしない男に対する恨みや怒りだろうし、犯人も殺された女性の遺族や関係者たちの誰かだろうと察しが付く。それなのに事件の細かい点を調べるための捜査が長々と続き、ここでも再び、すでに大まかなことは判明して満足してしまっているのにこの時間は何?となってしまった。

 

 ここで観客の興味をひきつけるものがあるとしたら犯人は誰かということになるのだろうが、被害者遺族と仲間たちの動機は「俺たちの期待の星だった彼女を殺すなんて許せない!」で皆一緒なので、正直なところ、その中の誰が犯人だろうと結局同じことのように思えてしまい、まったく興味が湧かない。

 

 

 そして「オリエント急行殺人事件」的展開の雰囲気もぷんぷんとしていたが、あれは全く関係のないように思える人たちが実はつながっていたと分かるから面白いわけで、この映画のように最初からつながりが分かってしまっていたら何も面白くない。だから全員が犯人だったところで、それもあり得るなと思うだけで、今さら何の興味もない。

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 振り返ってみると映画の冒頭で、被害者の女性と町の人々との関係が全部分かってしまうように描いていたのは失敗だった。なんの関係もないような町の人々が、実はつながりがあったと徐々に分かってくるような展開になっていれば、もうちょっと関心を持って見られたはずだ。

 

 これは何の時間?となってしまうような全く興味の持てない展開がだらだらと続く。だから思っていた通りの結末に落ち着きかけたところで、予想外の展開が始まったのはせめてもの救いだった。だが色々と無理があり過ぎて、救いだと思ってしまった迂闊さに後悔する羽目になる。

 

 歌手をあきらめることを思いとどまらせようとした奥さんが嫉妬していると思い込むのは道理に合わないし、そんな指摘をされて殴り掛かるのは意味不明だし、それを見かけた第三者の男が遺体を持ち帰るに至ってはイカれ過ぎてて理解不能だ。しかもこの男が最終的には殺人を行なったのに、警察に捕まっても強気でいられた理由が分からない。奥さんを庇った男も別に真実を警察に話す必要はなくて、後からこっそり奥さんだけに教えてあげれば済む話だった。

 

 興味の持てないストーリーを延々と見させられた挙句、最後に理不尽な話で畳みかけられ、心が折れてしまう映画だ。ミステリーと見せかけてその要素はほぼ無く、ただのヒューマンドラマなのもたちが悪い。松本清張作品ぽい雰囲気を出しつつ、深みも面白みもゼロだ。ミステリーでは犯人の動機が重要だというが、その前に観客の動機も少しは気にして欲しかった。

 

スタッフ/キャスト

監督 西谷弘

 

原作    沈黙のパレード (文春文庫 ひ 13-13)


出演/音楽 福山雅治

 

出演

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北村一輝/飯尾和樹/戸田菜穂/田口浩正/酒向芳/岡山天音/川床明日香/出口夏希/村上淳/吉田羊/檀れい/椎名桔平/モロ師岡/津田寛治

 

音楽 菅野祐悟

 

沈黙のパレード - Wikipedia

 

 

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