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あらすじ
ある日、落ち目の俳優と彼を家に送った専属スタントマン兼付き人の男は、隣の豪邸に住むロマン・ポランスキー、シャロン・テート夫妻を目撃する。
感想
マンソンファミリーによるシャロン・テート殺人事件を題材にしてはいるが、基本的にはレオナルド・ディカプリオ演じる落ち目の役者とブラッド・ピット演じるそのスタントマンの友情の物語だ。
自身も薄々感じている落ち目という事実を他人に指摘され、人前で泣き濡れるディカプリオが面白い。そしてそれを慰めるブラッド・ピットがとてもいい奴だ。しかし、かたや豪邸、かたやキャンピングカーに住んで格差が半端ない二人が、それでも友情を育めるというのは凄い。スタントマンがいい奴だというのもあるが、彼は彼でその役者をリスペクトしているからというのもあるだろう。撮影現場に役者を車で送って、ちゃんとスターだった時のお前でいろよ、と励ましの言葉を贈るシーンは胸が熱くなった。
そんな二人を中心に、当時のハリウッドで起きていそうな様々な出来事がネタを織り交ぜて描かれている。いっぱしの女優気取りの子役の少女や、ヒット映画「大脱走」にまつわる噂話、有名人が集うパーティの様子などが描かれ、中でもブルース・リーとスタントマンの対決シーンは面白かった。そんなにブルース・リーが弱いわけないだろうと思ったが、それはつまりスタントマンがとてつもなく強いということを表していて、説得力を持たせるには十分のシーンでうまいなと感心する。
そんな中でシャロン・テートとロマン・ポランスキー夫妻も登場し、マンソン・ファミリーも姿を見せて、刻一刻と事件の日が迫っている事を映画は知らせる。そこで印象に残るのはシャロン・テートの可愛らしさだ。特に自分の出演した昔の映画が上映されていることを知ってうれしくなって受付に声をかけ、その映画を見るシーンはとても良かった。当時を思い出しながら同じ殺陣の動きをしたり、自分の演技にウケている他の観客を見て思わず笑顔になったりして、とにかく幸せそうだ。その無邪気な姿に、何だよ天使かよ、と思ってしまった。
そしていよいよ迎えた事件の日。どんな凄惨な出来事が待ち受けているのかと身構えてしまったが、全然その反対の事が繰り広げられて爆笑してしまった。というよりも、ある意味凄惨ではあるのだがなぜだろう、それでも笑いが込み上げてくる。喝采を送りたい気分もある。
なによりも、ラリっていたせいもあるが、スタントマンが全く相手をとりあおうとしなかったのが痛快だった。おかしな奴らの言うことなど耳を傾ける価値もない、なんか言ってるけど結局はただの強盗だろ?と言わんばかりの扱いだ。今のご時世は相手に真摯に向き合って対話をしようとするが、こういう態度も必要かもしれない。
そしてひとしきり笑った後にじんわりと湧き上がってくる幸福感。あの天使のような子は死なずにすんだ、という安堵の気持ちで満たされる。死ぬどころか恐怖すら味わっていない。本当に良かったと胸をなでおろす。
これは「イングロリアス・バスターズ」と同じ歴史改変の手法なのだが、この映画の方が心を動かされたのはなぜなのだろう。救われた被害者が不特定多数ではなく顔の見える数人だったからか、その一人が天使のように素敵な子だったからか。
中盤まではすごく良いとまでは思っていなかったのだが、この様々な感情を巻き起こすラスト13分がとても良く、最高の余韻に浸ることができた。
ただ、シャロン・テート事件を知らないと隣に住む女性はなんだったの?となってしまうので、この事件については軽くでいいので調べておいた方がいい。自分も大体のあらましは知っていたが、チャールズ・マンソンが現場にいなかったのは知らなかった。この事件についてもう少し知りたくなった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作/出演
出演
レオナルド・ディカプリオ/マーゴット・ロビー/ブルース・ダーン/ダミアン・ルイス/ティモシー・オリファント/ルーク・ペリー/エミール・ハーシュ/ロレンツァ・イッツォ/カート・ラッセル/ゾーイ・ベル/ニコラス・ハモンド/デイモン・ヘリマン/ルーマー・ウィリス/ドリーマ・ウォーカー/オースティン・バトラー/ダコタ・ファニング/マーガレット・クアリー/マヤ・ホーク/レナ・ダナム/ハーレイ・クイン・スミス/レベッカ・ゲイハート/パーラ・ヘイニー=ジャーディン/マイケル・マドセン/マーティン・コーヴ/スクート・マクネイリー/クリフトン・コリンズ・Jr/ジェームズ・レマー/リュー・テンプル
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド - Wikipedia
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 【字幕版】 | 映画 | 無料動画GYAO!
登場する作品
登場する人物
シャロン・テート/ロマン・ポランスキー/ブルース・リー/チャールズ・マンソン
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