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「その昔、ハリウッドで」 2021

その昔、ハリウッドで

★★★★☆

 

あらすじ

 ピークを過ぎてドラマの主演ではなく敵役をするようになった俳優は、イタリア映画の主演オファーを受けるかどうかで悩んでいた。

 

 著書自身が監督した映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のノベライズ作品。

 

感想

 映画のノベライズ本だが、映画とは違う展開があったり、映画にはなかったシーンがあったりする。またメインとして描かれていたシャロン・テート事件に関するエピソードは脇に追いやられ、人気のピークを過ぎて転機を迎えた主人公の俳優人生がメインで描かれる物語となっている。

 

 主人公がレオナルド・ディカプリオ、そのスタントマンで相棒の男がブラッド・ピットと、それぞれが映画で演じていた役者の姿で脳内再生され、物語がスッと頭に入ってくるのが良い。映画では語られなかった彼らのバックグラウンドが明らかになるのも面白い。

 

 

 そして、相棒の男が映画を見る場面での心理描写は、きっとタランティーノはこんなことを考えながら映画を見ているのだろうなと想像できて興味深かった。テクニック的なところから単純にエロくて最高!までいろんな観点から映画を楽しんでいる。

 

 それから黒澤明について数ページに渡って熱く語る場面もある。タランティーノはあまり黒澤明には心惹かれていないのかと思っていたので意外だった。黒澤映画のランキング付けまでしている。こういうところは小説ならではの表現だろう。

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 映画にはない各エピソードがどれも面白く、中にはオチが見事に決まって感心してしまうものもあって、純粋に楽しめた。妙に足に関する描写が多くて、如実に著者の性癖が表れているのも可笑しかった。読む前はノベライズなんてただ映画をなぞるだけだしなとあまり気が進まなかったのだが、いざ読み始めて見たら思いのほか面白く、ページをめくる手が止まらなかった。

 

 映画と小説が互いを補い合うような関係で、読み終わった後にまた映画を見たくなる。単なるノベライズではなく、映画を見た人が楽しめるように書かれた小説だ。こんな感じで他の監督作品もノベライズして欲しい。

 

著者

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登場する作品

ローズマリーの赤ちゃん (ハヤカワ文庫 NV 6)

「アパッチの反乱(APACHE RISING)」

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「ダーバヴィル家のテス(ダーバビル家のテス)」

「エンドレス・ハイウェイ(Endless Highway (English Edition))」

 

 

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