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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「TAJOMARU」 2009

TAJOMARU

★★☆☆☆

 

あらすじ

 室町時代、管領職を代々務めてきた畠山家の若い兄弟は、幼いころに召し抱えた盗人の陰謀により数奇な運命をたどることになる。

 

感想

  タイトルに主役の役名を冠しているあたりに、主人公をヒーロー的に描きたい意図を感じるのだが、残念ながらそこで描かれる主人公はとてつもなくカッコ悪い。幼少期に同情から召し抱えた盗人に騙され家中を混乱に陥れられ、婚約者を守れず盗賊に手籠めにされ、挙句の果てには婚約者に裏切られる。

 

 その後、ひょんな事から盗賊になり生まれ変わったのかと思いきや、実家が気になり様子を窺いにコソコソと戻って捕らえられ、真実を知らしめる千載一遇のチャンスにも「僕は盗賊の多襄丸だもん、管領職の畠山家の人間じゃないもん」と最初はいじけて見せ、最終的には「好きな女にも部下にも裏切られた。どうしたらいいんだー。つれー。」とわんわん泣き言をいう始末。ダサい。

 

 

 しかもここまででまだ映画の中盤。正直、この先は主人公が何をやっても、そんなダサい男が何をやってもねぇ…としか思えなかった。一応は主人公の知らなかった裏があって、物語の体裁は保ててはいるのだが、それでも主人公のダサさは覆らない。

 

 そして主人公の婚約者の女も随分と酷い。元々の事の発端は、この女の実家が持つ金塊が原因だった。しかし、実際は彼女の父親が争いのもとになるからと金塊を捨ててしまっていた。なのにこの女は「もう金塊はありません。捨ててしまいました。」とはっきりと言わず、「なんでそんなことを聞くの?」ととぼけたり、曖昧な返事をして、結局争いのもとにしてしまっている。そんな女がヒロインで、ダサいヒーローとのあれこれ、興味ある?

 

 映画自体も冗長で長い。主人公とヒロインの関係を描きたいのか、裏切った部下との対決を描きたいのか、良く分からない。そのどちらも描きたいなら、その二つの話をうまく絡ませて最終的には一つの話にしなければいけないのに、最後まで別々で話をとっ散らかせ過ぎ。ヒロインとの話がまとまったのでようやく終わりかと思ったら、まだ裏切った部下との戦いが残っていることに気づいてがっくりと落ち込んでしまった。やりたかったらやればいいけど、手短かにねと懇願したくなった。

 

 途中でメインの三人が集まった白州の場面があって、一瞬「羅生門」的展開が起きるのかと思ったが気のせいだった。なぜか既に見た主人公の行動のダイジェストを見せられて、何でもう一回見せられなきゃならないの?と不思議だった。一応は「羅生門」を意識していたのだとは思うが中途半端で、こういう無駄が映画を冗長にする。

羅生門 デジタル完全版
 

 

 しかし上映時間の長い映画はリスクが高いなと、この長い映画を見ながら感じた。客はこの映画は面白くないわ、と見切った瞬間から、早く終われと祈り、なかなか終わらないことに憎悪を募らせる。上映時間の長いつまらない映画は必然的にその憎悪タイムが長くなるので、憎悪の内容がどんどん濃くなって評価はどんどん下がっていく。その点、上映時間の短い映画はそこまで憎悪は募らないので、面白かったとは言えないけどそんなに酷くはなかったかな、程度の軽傷で済むような気がする。今回は憎悪タイムが長すぎて、さらに発展して、なぜ上映時間が長い映画は敬遠されがちで、観るのに勇気が必要とされるか?というテーマであれこれ考察してしまった。

 

 そんな長い映画だったが、その中で唯一光っていたのが松方弘樹らベテラン俳優の演技。特に萩原健一の存在感のある迫真の演技は見事で、圧倒的だった。

 

スタッフ/キャスト

監督 中野裕之

 

脚本 市川森一/水島力也

 

原作 藪の中

 

製作 山本又一朗

 

出演 小栗旬/柴本幸/田中圭/やべきょうすけ/池内博之/本田博太郎/松方弘樹/近藤正臣/萩原健一/綾野剛

 

TAJOMARU
 

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