★★★★☆
あらすじ
所属していた熱気球サークルのリーダーが交通事故にあったという情報をやり取りしている間に、いつの間にか久しぶりに皆で集まることになった元メンバーたち。
感想
サークルの元メンバーたちの間で、リーダーだった男が交通事故を起こした情報が飛び交う。しかしそれに対する皆の反応は様々だ。必死で病院に駆けつける者、そうなんだと受け流す者。そしてメンバー間の関係もその後も親しくしていた者同士、疎遠になってしまった者同士と様々。かつて同じ時間を過ごした仲間たちなのに不思議な気分になる。ただそれが普通と言われれば普通なのだが。
それにしても元メンバー間の情報のやり取りを見ていて思ったのだが、わずか15年ほど前までは我々はこんなに頻繁に電話で話していたのだな、と感慨深くなる。状況的に情報を共有する必要があったというのもあるが、プライベートでこんなに電話のやりとりをすることは今はもうない。今でもたまにコンビニに入る時から出ていくまで延々と電話をしている人を見ることもあるが、あの人たちは何をそんなに話すことがあるのかと奇怪に思ってしまう。
やがていつの間にか皆で集まることになったメンバーたち。今さら集まってもな、と渋るメンバーがいたりしながらも、それでも結局、全員が集まるところにまだ絆は残っているんだなと温かな気持ちになる。皆で飲み明かしながら、サークル時代の思い出が蘇っていく。
集まった仲間たちの思い出も描かれるのだが、次第にその場にはいないリーダーとその彼女の話がクローズアップされていく。気球に夢中で地上での出来事はそっちのけだったリーダーが気球の中でのプロポーズし、それを地上でしてほしいと彼女が返すシーンは良かった。
その集まりの最後に皆が互いの連絡先を消去する意味は良く分からなかったが、それが青春時代に一区切りをつける儀式のようなものとなり、その後はそれぞれが大人の世界に足を踏み込んでいく。その世界で着実に足場を固めつつあっても、時々は空を見上げて気球時代の事に思いを馳せる彼ら。青春時代というのはそういものだ。
繰り返し使われる曲「陰りゆく部屋」の効果もあり、どこか甘くそしてほろ苦い気分にさせられる。エンドロール後のラストもよくある手ではあるが、野暮にならずに終わって悪くない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本
出演 深水元基/川村ゆきえ/長谷川朝晴/永作博美/西山繭子/いしだ壱成/与座嘉秋/大田恭臣/江口のりこ/安藤玉恵