★★★★☆
あらすじ
チリからイタリアの小島に亡命してきた世界的な詩人と、彼に郵便を運ぶ青年との交流。
感想
主人公の青年が、いかにも片田舎の素朴な青年といった立ち居振る舞い。遠慮がちに相手の様子を窺いながら、ためらいがちに詩人に好奇心を示していく。
詩人との交流、そして詩に対する関心を持つことで青年は変わっていく。詩人はモテるからと青年が想いを寄せる女性に近づくために協力を求め、彼女の母親や牧師を巻き込んだちょっとした騒動が起きてしまうシーンは、面白く微笑ましい。
そして、監督がこの女性の魅力を胸の谷間を強調することで表現しているのは、単純で笑ってしまうが、非常に説得力があるなと妙に感心する。無駄に説明を重ねる必要がない。
やがて詩人は祖国への帰国を果たす。その後音信不通だったが、数年後に再び島を訪れた詩人は意外な事実を知ることになる。このラストの詩人が本当にいい表情をしている。どこが複雑な表情。青年は、詩を学ぶことを通して様々な知識を身につけ、小さな島で暮らすのは窮屈に感じるようになってしまったのだろう。切ないラストシーンだった。
この主人公の青年を演じたマッシモ・トロイージは、この映画の撮影終了の数時間後に、持病の心臓病が原因で41歳の若さで亡くなった。もしかしたらこれがこの映画の物語に影響を与えているのかもしれないが、それにしても彼のこの映画にかけた執念には驚くしかない。なんせ文字通り命を賭けたのだから。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 マイケル・ラドフォード
脚本/出演 マッシモ・トロイージ
出演 フィリップ・ノワレ/ マリア・グラツィア・クチノッタ