★★★★☆
あらすじ
資金繰りに苦しむ牧場主は、町で稀代の悪党の逮捕劇に遭遇し、彼を駅まで護送する仕事を手に入れる。
ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベール、ピーター・フォンダら出演、ジェームズ・マンゴールド監督。エルモア・レナード原作、1957年の映画「決断の3時10分」のリメイク作品。原題は「3:10 to Yuma」。122分。
感想
苦境にある牧場主の主人公が、逮捕した大物の悪党の護送団に加わる物語だ。まずは稀代の悪党を演じるラッセル・クロウが素晴らしい。逮捕されても全く動じず、憎まれ口をたたくような太々しい態度で、危険な男であることが伝わってくる。
なにかが少し間違っただけで途端に男前でなくなってしまいそうな顔も、刹那に生きる悪党の危うさを示しているかのようだ。この頃はまだバランスを保っていた。初対面の女をあっさりとモノにしてしまうのも納得の魅力を放っている。
一方のクリスチャン・ベール演じる主人公は、頑なな男だ。地道に真面目に生きようとしている。まったく正反対の二人が護送の間に互いを認め合い、共鳴していく様子が描かれる。水と油のようでありながら、ともに信念の人であるという意味で実は似通っているのだろう。
護送団の他のメンバーらは、途中で悪党をいたぶったり侮辱したりしていたが、主人公はちゃんと敬意をもって接していた。また彼らは最終的には命を惜しんで仕事を放棄したが、主人公は約束した任務を最後まで果たそうとした。
表面上は取り繕っているが、人間なんて所詮、暴力的で利己的な生き物だ。だから、いっそのことそれを剥き出しにして生きてやろう。そう考えていた悪党にとって、主人公の姿勢は新鮮だったはずだ。共鳴するのも分かる。
ただ、それでも最後に悪党が主人公に命を預けたのは、その心意気に応じる度量が彼自身にあったからだろう。これは大物ならではだ。並の悪党だったら、結局は保身に走って殺すか逃げるかしていたはずだ。しかし、それにしても悪党を助けるために動いていた部下たちは気の毒だった。ボスの仕打ちに絶対ビックリしたはずだ。
悪党の右腕を演じたベン・フォスターの存在感も光っていた。
それから主人公の息子が、何かと皆を助けるシーンが多い。もちろん良いことなのだが、物語的には主人公の活躍に水を差しているように見えなくもない。これは主人公がヒーローではないことを示しているのだろう。ヒーローだったら一人ですべてを解決していたはずだ。
だがヒーローでなくても気高く生きることは出来る。そう教えてくれる映画だ。この血が受け継がれていくことで、いつかヒーローが生まれるのだろう。息子にはその片鱗が感じられた。
最近ではめっきり見ることのなくなった、見ごたえのある西部劇だった。
スタッフ/キャスト
監督 ジェームズ・マンゴールド
脚本 ハルステッド・ウェルズ/マイケル・ブラント/デレク・ハース
原作 Three-Ten to Yuma and Other Stories (English Edition)
出演 ラッセル・クロウ/クリスチャン・ベール/ピーター・フォンダ/グレッチェン・モル/ベン・フォスター/ダラス・ロバーツ/アラン・テュディック/ヴィネッサ・ショウ/ローガン・ラーマン/ケヴィン・デュランド/ジョニー・ホイットワース
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