あらすじ
自分の娘を殺されて復讐に燃える男は、謎の男の協力を得て、犯人と思しき男を拉致監禁する。
2024年に同じ監督によってリメイクされた「蛇の道」のオリジナル。85分。
感想
娘を殺された男が、謎の男の力を借りて犯人と思しき男を監禁し、復讐を果たそうとする物語だ。
まず、主人公に協力する哀川翔演じる謎の男が怪し過ぎる。本職は塾の講師ということなのだが、この塾が、老若男女が集まり複雑な数式を延々と説き続けるだけの場で、これまたミステリアスだ。授業の合間に生徒と交わされる会話も意味深で、まるで世界を操る公式を読み解いているかのような不穏さがあった。
新たに名前の挙がった男を拉致してきたりもして、男たちを監禁する様子が延々と描写される。あまり大きな動きがなくて重苦しさがあるのだが、元々主人公のボス的存在だったらしい拉致監禁されてきた男が最初は偉そうに振る舞い、逆になぜか主人公がペコペコしてしまったり、元々監禁されていた男が後からやって来た男に先輩面してアドバイスしたりと、変な笑いが込み上げてくる場面が時おり用意されている。
この間も、謎の男の言動は怪しい。助けてやっているはずの主人公の悪口を冷たく言い放ったり、監禁された男たちを唆しておいて追い詰めたりする。彼の言動によってものごとが動き、まるで支配者のようになっている。主人公も彼に感謝するだけでなく、いつの間にか媚びへつらうようになっていた。
クライマックスで、謎の男が主人公に協力していた理由が明らかになる。そして彼の真の目的が実行される。それまで、拉致監禁された男たちが悪者だったとしても幼女をどうこうするようなヤバい奴には見えなくて違和感があったのだが、少し納得した。よく考えると一番ヤバそうな奴は主人公だった。タイトル通り蛇の道は蛇で、ヤバい蛇にやらせるのが手っ取り早い方法だった。
ただ犯行自体は、やっぱり監禁された男たちがやったのだろう。そんな風には見えなくても、同じような年頃の娘がいても、悪は為すことができる。そう考えると人間は怖い。塾にいて主人公とも接触のあった少女は、娘のように愛すべき対象にも、彼らの犯罪の対象にもなり得ることを示唆している。
拉致監禁が繰り返され、主人公の娘の被害状況が何度も読み上げられ、既視感が生じるような構成だ。振出しに戻ったようなラストシーンも、大きなループの存在を感じさせる。今度は塾の少女が介在しない世界での復讐が始まることを仄めかしているかのようだ。
スタッフ/キャスト
監督 黒沢清
脚本 高橋洋
出演 哀川翔
下元史朗/柳憂怜/翁華栄/砂田薫/丹治匠/佐藤加奈/小田彩美/田中瑞穂/森裕悟/新山和敬/小鷲佳敬/臼井秀雄/大島孟
【本編】『蛇の道』(1998)2週間限定公開 - YouTube
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「蛇の道」(2024)