★★☆☆☆
あらすじ
戦争で荒廃し、温暖化によって陸地の多くが水没した近未来。特殊な装置を使って記憶を追体験させる商売をする男は、突然いなくなった恋人の行方を追う。116分。
感想
水没した街で、主人公が消えた恋人を探す物語だ。水のイメージが漂う近未来のハードボイルドものといった雰囲気で、どこか「ブレードランナー」を思い起こさせる。グッとくる世界観で期待が高まった。記憶装置を使うし、クリストファー・ノーランの弟が製作にも関わっているしで、ノーラン的な時間軸を操る要素もあるのかと思ったが、それはなかった。
主人公は相棒の女性と共に、特殊な装置を使って顧客に過去を追体験をさせる商売をやっている。この装置が、軍隊で使っていた尋問用の装置を転用したものだという設定なのがリアルだ。最新のテクノロジーは軍事技術から生まれる。
日本はそうじゃないところから最先端の技術が生まれていたのがクールだったが、今後は他国と同様の凡庸な国になっていくのだろう。まだ最新技術を開発する力が残っているならだが。
顧客の一人として出会い、付き合い始めるも目の前から消えてしまった恋人を主人公は探し始める。だが、主人公がそこまで必死になる理由が全く解せなかった。別に事件性はないのだから、自分には分からない何らかの理由で捨てられたのだなと察するべきところだろう。
そもそも出会い方がとても怪しく、ハメられている感が最初からあった。その後も、いなくなるのが信じられないほどの恋愛関係の深まりは描かれていない。だから仕事をそっちのけにしてまで彼女を探そうとする主人公の姿に、どうしてそこまで?と半信半疑な気持ちが付きまとって集中できなかった。いわゆる「運命の女」だったということなのだろうが、主人公の女々しさとあまりのダサさに気持ちが萎えてしまった。
別に主人公が女々しくてもそれはそれでいいのだが、それならこのテイストはやめて欲しかった。ハードボイルドな雰囲気の中で、全力で未練たらたらぶりを見せつけられても引く。平静を装っているが実はめちゃくちゃ引きずっていることが垣間見えるくらいだったら、哀愁が感じられて良かったかもしれない。
時間の経過とともに物語の全体像が見えてくるが、分かってくるのは主人公が本来はサブキャラに過ぎないということだ。銀行強盗ものにおける支店長みたいなもので、本来なら深く関わってくる存在ではなかった。強盗を指示したボスでも、彼らを捕まえようとする警察でもない。
そんな存在が、女への未練から事件を引っ掻き回している痛々しさのようなものがある。女に騙されていたことに気付くのも遅すぎるし、彼女の嘘の愛が本物に変わったことを知ってホッとしているところなどもまたダサい。エンディングで彼が取った行動もウェットだ。
情けない男をただ見守るだけの映画だ。情けなさが極まってカッコ良さに転じることもない。期待値が上がっていただけに、その落胆はでかかった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 リサ・ジョイ
製作 ジョナサン・ノーラン/マイケル・デ・ルカ/アーロン・ライダー
出演 ヒュー・ジャックマン/レベッカ・ファーガソン/タンディ・ニュートン/ダニエル・ウー/クリフ・カーティス/ブレット・カレン/ブレット・カレン/アンジェラ・サラフィアン/ナタリー・マルティネス/マリーナ・デ・タビラ