★★★☆☆
あらすじ
バンド活動も上手くいかず落ち込んでいた男は、ある日、松浦亜弥のミュージックビデオを見てファンになり、ハロプロおたくの仲間たちとつるむようになる。
感想
アイドルにハマった男が仲間と過ごす日々をつづった物語だ。ただ想像するようないわゆるオタクとは違い、主人公らはファンのイベントを主催したり、バンドをやったりとオープンな活動も行っている。だからオタクというよりも、サブカルの人たちといったイメージの方が強いかもしれない。
彼らがステージ上で馬鹿なことをやったり、誰かの家に集まって一緒にコンサートのビデオを見たりする様子は微笑ましかった。確かに中学生の延長みたいだ。でも本当は、大人だってこんな風に無邪気でいてもいいはずだ。主人公はアイドルオタクを続ける未来の自分に出会って愕然としていたが、別にそれでいいじゃないか、と思う自分がいた。
だが人は変わるものだ。熱中もやがては冷めていく。その変化の度合いは人それぞれで、それによって親密だった関係も少しずつ変わっていってしまう。寂しいことではあるが、必然でもある。だがそれでも昔の絆だけは消えず、残り続けていることに胸が熱くなる。
終盤は仲間の病気がメインになる。そんな状況ですらもとにかく面白がろうとする彼らの姿が印象的だ。この姿勢を描くことがメインで、アイドルオタクの話はおまけというか、たまたまそうだっただけのようにも感じた。昔は良かったと言い続けるのではなく、常に今を楽しもうとする彼らの姿勢には好感が持てる。
映画としては、ただエピソードを羅列しただけで、まとまりに欠けた物語になってしまっているように見える。終盤は話が違う方向に収斂していってしまったが、それが描きたかったのなら最初からそれメインの形で描いても良かったような気がする。「こんな男がいた」形式で。
松浦亜弥のMVや石川梨華の卒業コンサートの映像などが実際に使われていたので、あの頃ハロプロファンだった人は当時を思い出してより楽しめるだろうし、そうでなかった人たちもそんな青春があったのかと興味深く見ることができるはずだ。
スタッフ/キャスト
監督 今泉力哉
脚本 冨永昌敬
出演 松坂桃李/仲野太賀/山中崇/若葉竜也/芹澤興人/コカドケンタロウ/大下ヒロト/木口健太/中田青渚/片山友希/山﨑夢羽(BEYOOOOONDS)/西田尚美/ぱいぱいでか美/どんぐり/増子直純(怒髪天)/ニーネ/MONO NO AWARE
音楽 長谷川白紙
撮影 岩永洋