★★★★☆
あらすじ
郊外の大きな住宅で暮らす一家。ありふれた幸せな家族に見えるが、内実ではそれぞれが問題を抱えていた。アカデミー賞作品賞。
感想
冒頭から夫婦の噛み合わない会話や妻を警戒しつつ息子に話しかける夫の様子などが続き、どこか不穏なものを感じさせるスタートだ。一見どこにでもいそうな普通の家族だが、内実では何か問題を抱えていることを予見させる。巧みな演出だ。
その後もいびつな家族の姿を炙り出しながら、その原因となった出来事を少しずつ明らかにしていく。ただ、それが分かってくると全然「普通」の家族ではないだろうと思ってしまったが。普通の家族に起きたある悲劇が、一家を普通ではなくしてしまったということか。
彼らは彼らなりに、それぞれのやり方でおかしくなってしまった家族を立て直そうともがいている。だが、それぞれが目指す家族の姿が違い、その違いがまた衝突を生んでしまうもどかしさがあった。それに苦悩するそれぞれの様子が描かれるのだが、あまり明確ではなく、煮え切らないような形で表現されている。見ているともやっとしてしまうのだが、これがリアルなのかもしれない。
これは本人たちが自分の気持ちをうまく言葉や態度で表現できないから困っているわけで、それをはっきりと相手に示すことができるなら、あっさりと問題は解消してしまうはずだ。他のメンバーのぐずぐずとした態度に「だから何が問題なの?」と自分まで不満を募らせてしまった。まるで不和な家族の一員になってしまったような気分になる。こうやって互いの溝は深まっていく。しかし母親の態度は、育児を放棄した野生の動物みたいだった。
釈然としない気持ちを持ったまま見ていたのだが、ハッピーエンドとバッドエンドが半々のような結末は腑に落ちるものだった。ハッピーエンドだと楽天的すぎるし、かといってバッドエンドではこれまでの努力の甲斐がない。だからこんな風に落ち着くのが自然のような気がした。
集団生活をうまく維持するためには、なによりも互いに歩み寄ろうとする気持ちが大事なのだろう。他者を責め続けてもいけないし、自分を責め続けてもいけない。それが出来ないものは脱落するしかない。
スタッフ/キャスト
監督
脚本 アルヴィン・サージェント
原作 Ordinary People (English Edition)
出演 ドナルド・サザーランド/メアリー・タイラー・ムーア/ティモシー・ハットン/ジャド・ハーシュ
撮影 ジョン・ベイリー