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「博奕打ち外伝」 1972

博奕打ち外伝

★★★☆☆

 

あらすじ

 跡目争いで身を引いた兄弟分のために、後継者の組の横暴に必死に耐える組長。

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 シリーズ第10作。103分。

 

感想

 兄弟分のために、跡目を継ぐことが決まったライバルの組の横暴にグッと耐える組長が主人公だ。だが後継者に指名され、ライバルも反目せずに身を引いて、今後は安泰のはずの後継予定の組長率いる組が、荒ぶってライバルたちを挑発する理由がよく分からなかった。普通なら決定が覆ることがないように、おとなしくしていそうなものだ。

 

 しかしこれを主導していた右腕の男としては、親分の地位をより盤石なものとするために邪魔なライバルは潰し、軍資金も出来るだけ蓄えておきたかったのだろう。その気持ちは分からないでもないが、逆効果にしか見えなかった。とはいえこの右腕役を演じた松方弘樹の狂気は際立っていて、一定の説得力はある。

 

 

 跡目争いのライバルだった高倉健演じる男はあっさりと身を引くのだが、彼の仁義を重んじる性格が、主人公に呪いをかけることになってしまった。彼のお願いがなければ、主人公は無駄に弟を二人も死なせることはなかったはずだ。だがこれが、やるせないながらも任侠道なのだろう。皆がそれぞれの信念で動いた結果だ。

 

 また、右腕役の男に勝手放題されているだけに見える若山富三郎演じる後継予定の組長も、本来なら部下に舐められている情けない男でしかないはずなのに、そんな部下の暴走を受け入れ飲み込んでしまう懐の深さに、器の大きさを感じる。

 

 主演の鶴田浩二に加えて、高倉健や若山富三郎などもいる豪華な出演陣で、ドリーム感のある映画だ。出ているのはオープニングクレジットで分かっていたが、忘れた頃に登場した菅原文太はカッコ良かった。颯爽と登場し、波風を立てて周囲をざわつかせ、サッと退場してしまうのも彼らしい。

 

 華やかな出演陣がぞれぞれ、らしさのある男ぶりを見せながらぶつかるドラマで、見ごたえたっぷりだ。だが最終的には主人公の堪忍袋の緒が切れて、敵地に一人乗り込んでいくやくざ映画のワンパターンぶりに、またかと呆れてしまう部分もあった。もはや様式美ではあるのだが。

 

 それにラスボスとの対決が地味な一突きで終了し、そのまま静かにエンディングとなったのは、あっさりとし過ぎで物足りなかった。一瞬で勝負がつくにしても、一突きではなく、豪快に大きく斬りつけるとかカタルシスのある派手なアクションが欲しかった。

 

スタッフ/キャスト

監督 山下耕作

 

出演 鶴田浩二/若山富三郎/菅原文太/松方弘樹/浜木綿子/伊吹吾郎/金子信雄/内田朝雄/潮健児/汐路章/野口貴史/川谷拓三/志賀勝/辰巳柳太郎

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音楽 木下忠司

 

博奕打ち外伝

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