★★★★☆
あらすじ
船に乗り遅れて築地市場で働き始めた機関士の男は、市場がヤクザ勢力に乗っ取られそうになっていることを知る。
「日本侠客伝」シリーズ第3作。
感想
関東大震災後、日本橋から築地に移転した魚市場が舞台だ。震災と移転のどさくさに紛れ、市場を乗っ取ろうとするヤクザ勢力との戦いが描かれる。
フィクションとはいえ、当時はヤクザが役人と結託して市場を支配しようとする設定にリアリティがあったということで、今もそうなのかもなと色々と想像してしまった。漁協の上の方の人たちにはなんか怖いイメージがある。最近の築地から豊洲への移転の際にも何かあったりしたのかな?と気になってしまった。
主人公は、船に乗り遅れてしばらく築地で働くことになった船乗りだ。序盤は特に、演じる高倉健のまだ若さの残るやんちゃな一面が見られて新鮮だった。物語が佳境に入るにつれ、次第に彼の演技には重みが出てくるが、それでもどこか軽やかさが残っている。強面の男たちに囲まれながらも、ずっと相手を「ヤクザ君」呼ばわりしていたのは痛快だった。
ただ大事なところで突然、組合長の組合費の持ち出しの件を皆に暴露してしまった場面には、そこでその話をしちゃう?それは言っちゃいけないヤツでしょ?と驚いてしまった。これは若さが出てしまったということなのだろう。だが状況を好転させることが出来たので、結果オーライだ。
それからこの映画は群像劇的な側面もある。主人公だけでなく、鶴田浩二演じる渡世人や長門裕之演じる人足、北島三郎演じる板前など、多くの登場人物に見せ場が用意されていて、物語に深みが出ていた。中でも丹波哲郎演じる船長が、敵と味方がにらみ合う緊迫した状況を愉快そうに眺め、嬉々として乱闘に参加する様子は面白かった。
そのクライマックスの大乱闘は、両者が入り乱れて土埃が舞う混沌とした雰囲気がとてもリアルで見ごたえがある。その中で大勢を相手に奮闘する主人公の迫力も凄かった。
最後が高倉健ではなく、鶴田浩二の見せ場で終わってしまうのが少し不満だが、それでもかなり満足できる娯楽映画だ。
スタッフ/キャスト
監督 マキノ雅弘
出演
藤純子/長門裕之/鶴田浩二/北島三郎/大木実/待田京介/南田洋子/山城新伍
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